特別支援学校(養護学校)におけるBCP対策
ここでは、文部科学省「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」をもとに 特別支援学校におけるBCP対策の留意点やポイントを解説しています。
特別支援学校(養護学校)のBCP対策が必要とされる理由
障害のある児童は自分の身を守る、避難するという行動が困難になります。学校においては、それぞれの生徒の特性と予想される困難を理解し、家庭と連携しながら、必要な支援体制と対応計画や物品等の準備を行うことが必要になります。
特別支援学校(養護学校)の児童生徒が災害発生時陥りやすい支障
特別支援学校の児童生徒が災害発生時に陥りやすい支障として、情報の理解や意思表示が難しかったり、危険回避行動をとれなかったりすることが考えられます。障害のある児童生徒が災害時に陥りやすい以下の状況を想定して動く必要があります。
情報の理解や意思表示が難しいことがある
- 情報を理解したり、判断に時間がかかったりする
- 自分から、周囲へ意思を伝えられないことがある
- 全体へ緊急情報を伝えただけだと、児童生徒に情報伝達漏れが生じやすい(情報の理解が難しい)
危険回避行動をとれない
- 危険が迫っていると、認識できないことがある
- 状況に応じた対応が難しい場合があり、落下物を避けるなどの危険回避が遅れることがある
- 危険回避をしようと慌ててしまうことがある
- けがをしても、状況を的確に伝えられず、周囲の対応が遅れてしまうことがある
適切な避難行動をとれない
- 肢体不自由・視覚障害などがあると、段差・傾斜で避難に遅れが生じやすい
- エレベーターが使えない状況になると、階下・屋上への避難が遅れてしまうおそれがある
生活生命維持を維持できなくなる可能性
- 薬や医療用具がないと、生命に関わったり生活の維持が難しかったりする
- 避難時の天候や気温によって、体調不良を起こすおそれがある
非日常への適応が困難
- 急激な環境の変化や経験したことがない場面に適応できない
- 被災したことによって不安な気持ちが強まり、普段以上に感情のコントロールが難しくなる
現在起こっていることや、避難場所などを一度に伝えても、障害特性によっては理解できない場合があります。それぞれ生徒の障害特性に合わせた対応を取るよう心がけることが重要です。
特別支援学校(養護学校)のマニュアル作成時のポイント
ここでは、特別支援学校のマニュアル作成時のポイントをご紹介します。
障害特性に応じて災害時の物品をそろえておく
- 避難行動に必要なもの:車いす・担架・毛布・誘導ロープ・避難車・メガホン・絵カード等
- 避難生活(食事・排泄・睡眠・コミュニケーション):ビニール袋・手袋・マッシャー・キッチンバサミ・とろみ剤・紙おむつ・おしり拭き・アルコール・筆談ボード・ラジオ等
- 医療ニーズに応じた物品:呼吸管理(気管切開)・経管栄養・内服薬(常用している薬・頓服)・医療機器のバッテリー・毛布・カイロ・防寒着・扇風機・医療機関の指示書・発電機(複数台)と燃料・簡易コンロと鍋(経管栄養の加温用)など
- 個人用のリュック(必要物品をつめたもの):
個人用食料・紙おむつ・安心グッズ・医療器具・防寒着など
偏食やアレルギーがある児童生徒の荷物として、食べられるものをリュックにいれておきましょう。
環境の変化が生じると、パニックを起こすことがあるため、子どもの好きな絵本やぬいぐるみなどを入れておくと、安心につながりやすいです。
食料やとろみ剤、内服薬には、使用期限があるため、リュックの内容は定期的に点検するのが望ましいです。
登下校中の地震発生・地震後の通信障害などの状況を想定した準備
- 児童生徒の通学経路と時間の目安
- 津波・火災などの二次災害に備えた通学バスの時間や避難場所・経路の確認
- 通信手段が途絶に備えた場合の安否確認・学校からの連絡事項の伝達
- 緊急連絡先の確認:自宅以外の避難予定先・放課後ケア等の利用状況
災害用児童生徒等名簿は、放課後等デイサービスの利用状況を明記するのはもちろん、下校後自宅以外の場所へ帰宅する場合も把握しておきましょう。通所日の変更がある場合や、自宅以外の場所へ帰宅するケースについても、報告をしてもらうようにしてください。
保護者との連携
- 自力で通学している児童生徒の保護者には、登下校中の災害時の探索保護の依頼する
- 訪問指導先の保護者と一緒に、災害時の避難場所や必要物品の確認
- 居住エリアで行われている地域行事や防災訓練への参加を促す(地域のネットワークづくり)
自力で通学している生徒は、登下校で通るルートについても把握しておく必要があります。
居住エリアでの行事や訓練へ参加をしておくことによって、理解者・支援者を増やして、災害時の助け合いにつながります。
最も考えるべきなのは「保護者や関係者との緊密な連携を図ること」
特別支援学校におけるBCP対策は、児童の障害特性に合わせた対応が求められます。学校防災の体制を整備することはもちろん、災害時に役立つ備品や物品の備蓄等については、日常から災害発生時を想定して備えておく必要があります。保護者をはじめ、放課後等デイサービスのスタッフと緊密な連携を図っていくことも重要です。
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