2023年4月より、児童福祉施設においてBCP(事業継続計画)の策定や研修・訓練、定期的な見直しが義務付けられました。幼稚園や保育園では、園児の命を守り、安全を確保するための取り組みが求められています。では、幼稚園や保育園にはどのようなBCP対策が求められるのか、見ていきましょう。
BCP対策が必要な理由は、園児や保護者の安全確保、職員の安全確保、施設の機能維持、そして早期復旧と再開のためです。園児が安心して過ごせる環境を整えることはもちろん、保護者が子どもを預けられない状況が続けば、仕事に行けなくなり、社会活動の中断につながります。その結果、事業存続が困難になるなど、社会機能の維持にも影響を及ぼすため、幼稚園・保育園のBCP対策は極めて重要です。
BCP対策を策定する際に考えるべき要素は以下の通りです。
災害や緊急事態が発生した際に、どの項目が最優先で対処すべきかを明確にしておくことが重要です。基本的には、園児の安全確保が最優先であり、それに続いて職員の安全、施設の保全、保護者への情報提供が求められます。優先順位を明確にすることで、混乱を避け、迅速かつ的確に対応することができます。
避難計画は、園児と職員が安全に避難できるようにするための重要な計画です。施設内の避難ルートを事前に確認し、園児が混乱せずに避難できるよう訓練を重ねることが必要です。また、避難場所や避難方法を職員と保護者に周知しておくことも欠かせません。
災害時には通信手段が混乱する可能性が高いため、複数の通信手段を確保しておきましょう。例えば、電話やメールだけでなく、メッセージアプリや緊急用の無線など、複数の通信手段を準備し、緊急時に保護者や関係機関へスムーズに連絡できる体制を整えることが求められます。
災害時には怪我をする可能性があるため、職員全員が応急手当を行えるようにしておくことが大切です。心肺蘇生法(CPR)や異物除去法の訓練を定期的に行うと共に、近隣の医療機関との連携体制を整え、緊急時に対応できるようにしておきましょう。
災害時に必要な飲料水や食料の備蓄は欠かせません。園児の年齢や人数に応じた食料や水、必要な物資を一定期間分準備しておくことで、緊急時に安心して対応することが可能です。消費期限を定期的にチェックし、備蓄品を更新することも重要です。
BCPの有効性を高めるためには、定期的な訓練が必要です。避難訓練や応急処置訓練を定期的に行い、職員と園児が緊急時にどう行動すべきかを体で覚えることで、実際の災害時に落ち着いて行動することができます。
BCPは策定後も定期的に見直しを行い、施設や環境の変化に応じて更新することが重要です。例えば、新しい設備が導入された場合や、地域の防災状況に変化があった場合には、その内容を反映させ、常に最新の状態に保つ必要があります。
また、施設の職員が入れ替わった際や新たな災害リスクが発生した場合にも、その都度計画を更新することが大切です。計画が古いままでは、緊急時に役に立たない可能性があるため、常に現状に即した内容に保ちましょう。見直しを行う際には、専門家のアドバイスを受けることや、最新の防災情報を取り入れることも効果的です。
BCPの策定だけでなく、すべての職員がその重要性を理解し、適切に行動できるようにすることが重要です。BCPの内容を定期的に説明し、全員が自分の役割を認識していることを確認することで、緊急時の混乱を最小限に抑えることができます。
特に、新しく入った職員やパートタイムのスタッフにも、BCPの内容をしっかりと理解させることが重要です。訓練を通じて、自分が何をすべきかを明確に理解し、自信を持って行動できるようにすることが、緊急時の効果的な対応に繋がります。
また、職員間でのコミュニケーションを密に保つことで、全員が一体となって行動できる環境を整えることも必要です。
BCPの効果を高めるには、実際の訓練が必要不可欠です。計画だけでなく、実際の避難訓練やシミュレーションを行うことで、計画の中で想定していなかった問題点を洗い出し、改善することができます。これにより、BCPの実効性が高まります。
訓練を通じて、職員や園児が緊急時の行動に慣れておくことで、実際の災害時に冷静に対処することが可能になります。訓練は一度行えば良いというものではなく、定期的に繰り返し行うことが大切です。例えば、年に数回の避難訓練や応急処置の練習を実施し、その度に改善点を見つけて反映させることで、計画の精度を高めていくことができます。
訓練後にはフィードバックを行い、全員で改善点を共有することで、次回の訓練に活かすようにしましょう。
幼稚園や保育園のBCP対策で最も重要なことは、園児の安全を確保することです。園児の命を守るための避難計画や応急処置の準備はもちろん、職員全員が迅速に行動できるよう訓練を重ね、常に安全対策を万全にしておくことが求められます。
園児の安全が確保されてこそ、保護者も安心して子どもを預けることができ、施設全体の信頼性も向上します。そのため、日頃からの準備と訓練、そして職員の意識の向上が何よりも重要です。