社会福祉施設等のBCP事例からBCPの重要性について学びます。社会福祉施設は、高齢者や障害者など災害時に支援や配慮が必要となる多くの人が利用しており、災害時であってもサービス提供を維持できる体制を整備しておくことが大切です。
東日本大震災や熊本地震、大型台風や豪雨など、実際にさまざまな災害に見舞われた介護・社会福祉施設は、対応にどのように苦慮したのか。BCPの有用性に関する調査研究のヒアリング内容、考察についてまとめました。
停電時、ランタンや非常用電源装置、焚火などを使用した。翌日電力は復旧したものの、その後約1か月間計画停電が続き、ナースコールが使用できないため、利用者を食堂などに集めて対応することとなった。
災害当日は、ガソリンを燃料とする携行缶タイプの非常電源を使用。しかし、2日目の夜までガソリンがもたなかった。
照明や冷暖房機具、事務室のパソコンなどの他、医療機器へ電力を確保するための非常用電源の確保が必要不可欠です。災害発生からガソリンなどの燃料は入手しづらくなる傾向にあるため、長期的な備蓄が可能かつ連続運転が可能となる発電機を準備する必要があると言えるでしょう。
利用者の安否確認は障害者を優先。電話が不通となったため、災害発生2日目以降に徒歩・車にて各戸訪問するしかなかった。
緊急時には電話連絡網、LINEを用いて連絡・報告することになっている。しかし、電話連絡網は普段使用することがほとんどないため、災害時に有用となるかは疑わしい。
災害時の利用者、職員の安否確認は最優先事項となります。災害時に有効な連絡手段やシステムなどを確保しておくことが大切です。また、システムや連絡網は実際に訓練によって活用できるかどうかを試して改善することも必要と言えるでしょう。
経管栄養利用者の栄養剤の備蓄は、平時の在庫と非常用備蓄を一元化して管理することが難しい。
利用者のおむつは普段1人当たり1日7枚ほど使用するが、災害時には2枚にまで抑えなければならなかった。
災害発生時、3日分の非常食を備えていたが、先行きが見通せないため、1日2食に抑えた。
施設及び利用者が所有するポータブルトイレだけでは足りなくなり、職員が段ボールを使って簡易トイレを作成した。
災害時に必要となる食料品や日用品などは、BCPに優先順位とともにリストアップしておくとともに、備蓄しておくことが大切です。備蓄倉庫や備蓄のためのスペースが足りない場合は、近隣施設や地域の協力を得る、緊急時確実な調達のフローを整備しておくなどが必要でしょう。
断水時使用できるトイレを確保することは、感染症蔓延防止にもつながります。
主に、インフラや連絡、備蓄について状況と考察をまとめました。これ以外にも地域や他施設との連携、BCPの定期的な検証・改善や福祉避難所としての役割などについて、実際に災害を経験してみてわかったことが数多くあるようです。
本調査実施時、社会福祉施設等におけるBCP策定率はわずか24.5%。しかし、2024年度からは介護事業所におけるBCP策定が法的に義務化されます。いつ、どこで大規模災害が発生してもおかしくない状況の中、利用者や家族の命や生活を守るため実効性のあるBCPの早急な作成が求められています。
三菱ケミカルアクア・ソリューションズの地下水活用膜ろ過システムを導入し、災害時の水を確保するだけでなく、地域貢献の役割も果たしている介護・福祉施設の導入事例を紹介します。
災害時の水のライフライン確保及び地域への社会貢献を目的に導入。近隣自治区と「災害時における地下水供給に関する協定書」を締結しています。この協定により、災害時に断水があった際に、地下水の余剰分を地域住民に無償提供することが可能となりました。
災害時の安全・安心な住まいと地域貢献を目的として導入。平常時には、夏冷たく冬温かい地下水ならではのよさを感じることができます。一方、災害時には、非常用発電機を併設していることで、断水時の給水支援に貢献することも可能です。
平常時、施設内の水を確保することができるだけでなく、非常用の給水栓として、断水時に近隣住民にも水を供給することができます。浄水場からホルムアルデヒドが検出され、一帯が断水した際にも水を確保することができました。
有限会社 池田商会では、災害時に強いLPガス自家発電システムを取り扱っています。実際に導入した介護施設の導入のきっかけ、効果についてまとめました。
大規模災害時の長時間停電への不安があった。石油ガス災害バルク等導入に関わる補助金の活用が可能だった。
長時間停電が発生した際、事務所室、食堂、トイレなどの共用部分の照明などに3日間以上電力を供給することができた。入居者の日常生活の維持に加えて、地域の福祉避難所としての機能を確保することも可能となった。
人工呼吸器が必要な患者に、安全・安心の環境を提供したいと考え、災害に強いLPガス自家発電機及び医用UPS(無停電電源装置)を導入した。補助金が活用できることも導入を決断する理由となった。
停電時でも人工呼吸器、照明などを3日間72時間使用可能となった。
要介護3~5認定の入居者が、災害時の長時間停電時でも安全・安心に過ごすための環境を整備する必要があった。人工呼吸器を使用している入居者に対し、長時間停電時の電源確保の課題を早急に解決すべきであった。
停電時であっても、事務所の照明や電話、厨房室の電気機器が使用できる環境になった。ベッドライトやナースコールも自家発電機でバックアップが可能となった。人工呼吸器への電力を確保できるようになり、安心して過ごせる環境を提供できるようになった。
設備のプロ
池田道雄
池田商会
多くの施設様からの最初の問い合わせは、現在の設備の老朽化に伴る改修工事計画立案時、あるいは業界での補助事業案内を受けた直後というのがほとんどです。
従って、特定の設備の入れ替えで災害対策をしたいというご相談になりますが、当社は、設備はBCP対策の方法論のひとつという考え方ですので、まずは、どのようなBCP対策をしようとしているのかをなるべく詳しくお伺いします。
共通必須条件として72時間以上の電力確保を挙げていますので、予算や規模に合わせて、ポータブル発電機のみというところもあれば、150kW以上の発電設備、太陽光+蓄電池、電源不要の空調設備、炊き出し設備、それらの組み合わせなど様々です。
プロフィール
BCPマニュアル策定、BCP設備設計、設備供給、施工管理、補助金申請代行を一括して引き受ける。非常用電源においては、災害時に少なくとも72時間以上の持続可能なエネルギー供給対策を考案・提供。
防災のプロ
髙木 敏行
(株)かんがえる防災
福祉施設BCP作成に伴い、重要なことはご家族との連携・地域との連携体制の構築です。
施設の職員のみの対策では災害対応は困難となります。
施設でソフト面・ハード面共に災害対策を行っていることが大前提ですが、年間の訓練計画やBCP見直しをする際に家族との連携・地域との連携を行える計画を作成する必要があります。
福祉施設では、「人」を守る計画を施設のみで行う考え方から、家族・地域に協力を求め、被害を軽減し、事業継続を行う方法を構築していく事が重要です。
プロフィール
元消防士であり、防災資格を3種持つ(防災士【登録No.136593】、防災危機管理者【認定番号.190805】、危機管理士2級(自然災害)【登録番号N-19014】)防災のエキスパート。
災害によって失われる、人、物、時間、思い出への被害を軽減するために、必要な物を必要な形で提供するプロ。