避難所BCP対策は、避難所運営の基本を知ることからスタートします。内閣府、千葉市が作成したガイドラインや情報・ヒント集を参考として、避難所運営の基本は何かについてまとめました。
内閣府、千葉市男女共同参画センターが作成した資料をもとに、避難所を運営する点で基本となる運営体制の確立やマニュアルの必要性、要配慮などについて考えてみました。
内閣府のガイドラインは、避難所における避難者の健康維持を目的として質の向上を目指した内容となっています。しかし、いくら平時から備えていても避難当初から快適な状況を作りだすことは困難です。少しずつでも構わないので、段階的に質の向上を目指すことが大切であり、そのためには平時からの避難所運営体制の確立が重要となります。
自治体の防災担当だけでなく、要配慮者担当課や医療・福祉・保健の専門職能団体と横断的な取り組みを行っておく必要があります。それぞれの役割分担を明確にしたうえで、連携を図りながら避難者の要望や希望に沿った支援ができる体制づくりをしておきましょう。
避難所運営業務では、事前の備えが絶対的に不可欠となります。運営マニュアルや書式、チェックリストなどを事前に準備しておけば、担当者が変わっても対応が可能です。災害用トイレや衣類、入力など、細かなことにも配慮しておく必要があります。また、要配慮者や女性や子ども、ペットなど、様々なニーズに応えられるような準備も必要です。
千葉市男女共同参画センターは、男女共同参画の視点で避難所運営を実践するための情報やヒントをまとめています。これまでの避難所運営は、男性が主体となって進められることが多かったため、女性の意見が取り入れられにくいという課題がありました。内閣府も避難所の運営組織には男女両方が参画するだけでなく、責任者などの役員のうち3割以上は女性が占めることを目標として掲げています。
誰もが安全・安心と思える避難所レイアウトにするには、大人数を収容する体育館などの会場レイアウトのほか、乳幼児のいる家族、女性用品物資保管スペース、要配慮のための福祉スペースなど、個室を確保した方がいいスペースについても配慮する必要があります。
また、配慮が必要な人々のニーズを聞くことも大切です。避難所には、女性や子ども、障害者、疾患のある人、外国人、妊産婦など、さまざまな人がいます。例えば、高齢者であれば、洋式トイレやベッドや椅子、手すりや杖、介助者や医師などを配慮することが大切。それぞれの立場を理解することが快適な避難所の運営につながります。
実際に避難所で生活した人の声に耳を傾けることで、避難生活の課題や運営マニュアルの必要性を明らかにすることができます。
避難所の格差、テレビ、自衛隊が入っている避難所は、物資が豊富で、私達は永らくパンだけでした。市議会議員の方の連絡で物資が入ってくるようになりました。マニュアルと連絡網が大事だと思います。(中央区 会社員 男性 54歳)
一部の人が自分の思いで行動を取っていた。
学校の教室など部屋の中で、コンクリートの地面に模造紙を引いて、その上に毛布を敷き、「寒い寒い」と云う人が多くいた。それにもかかわらず、学校の校庭では荷物が入っていたと云う段ボールを燃やしている。「燃やさずに床に敷きましょう」と云っても、寒いから燃やすのだと主張。
強く言えばトラブルの元にもなる。何かマニュアルがあればと思った。(中央区 自営業 男性 70歳)
マニュアルが整備されていないことにより、物資調達に避難所間格差が生じたり、身勝手な自分本位の行動がみられたりした例です。避難所では、体力的にも精神的にもギリギリの状態の人が生活しています。不満や不平があってもそれを口にすることで新たなストレスが生じることにもなりかねません。秩序ある公平な避難生活のためには、避難所運営マニュアルが必須と言えるでしょう。
避難所で宿泊経験のある人に聞いたところ、避難所で最も困るもの、整備して欲しいものの1位はトイレでした。第2位にはプライバシーがあがっていますが、最近では布による仕切りで世帯ごとのブースを設けたり、キャンプ用テントを活用したりするなどして対応できているようです。
トイレで困ることの内容としては、「数の少なさ、衛生環境の悪さ、高齢者や女性への配慮がない」などがあげられています。このような状況からトイレに行きたくてもガマンすることによって、体調を崩すことも。
また、衛生管理が行き届かないことでトイレが感染症の温床となる場合もあります。最近では、断水時でも衛生的に使用できるポータブルトイレなどが開発されているため、避難所に整備しておく必要があるでしょう。
避難所の困りごととして「飲料水」「寒さや暑さ」もあがっています。災害発生時、水道や電気などのライフラインが長期にわたって途絶することは少なくありません。そんなとき、非常用発電機があれば、ポンプで水をくみ上げたり、暖房・冷房機器を使用したりすることが可能です。
非常用発電機にはさまざまなタイプのものがありますが、最近では災害時に強いLPガス式発電システムも注目されています。
設備のプロ
池田道雄
池田商会
避難所におけるBCP対策は、いかに円滑な避難所運営できるかが重要です。
避難所の規模によって運営初期は誰がイニシアチブをとるかが変わってきます。
そのためには、実際の当事者目線(地域住民、自治体職員、医療・介護従事者、ボランティアなど)で作られたマニュアルと日頃からの設備メンテナンスが欠かせません。
設備のメンテナンス不備で発電機が稼働しなかったという事例は、災害が起こるたびに報道されるほど多く、大規模災害時には二次災害の原因になりえます。
有事の運営マニュアル及び初動訓練と共に平時の設備の管理体制を整えましょう。
プロフィール
BCPマニュアル策定、BCP設備設計、設備供給、施工管理、補助金申請代行を一括して引き受ける。非常用電源においては、災害時に少なくとも72時間以上の持続可能なエネルギー供給対策を考案・提供。
防災のプロ
髙木 敏行
(株)かんがえる防災
令和3年5月から避難先の考え方が変更しました。
避難所にも種類があります。どの災害に対応した避難所なのか、どこに立地しているのか、収容人員は何人か、現状どのような備蓄品が避難所にあるかなど、避難所ごとに改善するポイントが違います。
また避難所関係者も被災者であるため、自宅の備え方も重要になります。
地域の実情に応じた対策が必要になりますので、防災専門家の意見を参考に対応策を作成するべきです。
地域の防災リーダー育成の流れがありますが、教育が行き届いていないことが実情です。
プロフィール
元消防士であり、防災資格を3種持つ(防災士【登録No.136593】、防災危機管理者【認定番号.190805】、危機管理士2級(自然災害)【登録番号N-19014】)防災のエキスパート。
災害によって失われる、人、物、時間、思い出への被害を軽減するために、必要な物を必要な形で提供するプロ。