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病院におけるBCP対策

現段階でBCP策定が法的に義務化されているのは災害拠点病院のみ。それでも、BCP策定率は100%ではありません。病院におけるBCPの現状や課題について、生命維持に直結する非常用電源や病院BCP事例などを通して解説します。

目次
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病院のBCPは義務化される?

現段階では、災害拠点病院のみが法的にBCPの策定が義務付けられています。しかし現状をみると、災害拠点病院ですらBCP策定率は71.2%と満足できる状況にはありません。また、救急対応や周産期医療対応以外の病院では、わずか20.1%とほとんど進んでいないことがわかります

設備に関する対策も現段階で充実しているとは言えませんが、生命に直接影響を与える非常用電源の確保の必要性については認識されているようです。災害時、生命維持に関わる医療機器や設備などへの電力確保は、災害拠点病院以外の病院でも実践されなければならない重要なポイントです。

参照元:厚生労働省「病院の業務継続計画(BCP)策定状況調査の結果(2019年7月)」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000533729.pdf)

病院のBCPの義務化に
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命を守るための電気設備

病院におけるBCPの要は非常電源対策にあるともいえます。人工呼吸器や人工透析機などの医療機器はもちろん、手術や出産など、わずかな瞬間も電力の停止は許されないため、命を守るための非常用電源を確保しておかなければなりません

非常用電源には、ディーゼル発電機、LPガス式発電システム、医療用蓄電池、太陽光発電システム、コージェネレーションなどの種類があり、それぞれに長所や弱点があります。最近では、エコでクリーン、バルブやシリンダーに燃料を貯蔵して、72時間以上電力供給ができる災害に強いLPガス式発電システムが注目されています。

病院の停電対策に
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病院のBCP事例

九州の病院では、熊本地震以降、災害拠点病院を中心にBCP策定が本格化しています。総務省九州管区行政評価局がまとめた資料には、九州各県の病院のBCP事例を数多く掲載。BCPを策定していた病院でも、実際の災害を経験して指揮系統や行動計画、マニュアルの見直しを迫られたところが少なくありません。

特に、災害による長期停電への備えを強化している病院が多いようです。オペ室やICU、分娩室や透析室などでは、長期停電はおろか電力の瞬停も許されない状況に。緊急時に72時間以上、必要最小限の箇所に電力を確保する取り組みは、災害拠点病院以外でも推進されています

災害拠点病院のBCP事例に
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BCP対策を考える:災害時に予想されるリスク

病院がBCP対策をと考える時には、災害時に予想されるリスクを考慮しておく必要があります。
そこでまずはどのようなリスクが考えられるかを把握しておきましょう。

指揮系統の混乱

病院も一つの組織です。決して個々が勝手に動いているのではなく、構築された組織・指揮系統に基いて動いています。
しかし何らかの災害が起きると、指揮系統が混乱することで、何をすればよいのか分からない状況が想定されます。いくら経験を積んだスタッフたちばかりではあっても、確認・承諾・連絡が行えない状況では、現場も混乱することでしょう。そして現場が混乱すれば、患者たちはさらに不安や混乱を抱くことになるでしょう。

ライフラインの停止

医療の現場ではいわゆるライフラインを使用している患者もいますが、災害によるトラブルやアクシデントに見舞われた際、ライフラインが停止する可能性もゼロではありません。
例えば生命維持装置の電源が入らなくなり、起動不可となれば患者の生命の危機ですが、トラブルやアクシデントは、症状を見ている訳ではありません。
患者にとって大切な機器にはトラブルやアクシデントが起きない保証などありません。
もしもですが、生命を預かっているライフラインが停止した場合、病院にとって計り知れない損失を生むことになるでしょう。

施設や設備の破損

施設や設備が破損する可能性があります。 ライフラインほどではないにせよ、医療行為に必要な施設や設備が破損してしまった場合、それまで当たり前のように提供していた医療が提供できなくなります。 生命の危機が脅かされる患者もいれば、生命の危機までは及ばないものの、治療に支障をきたしてしまう可能性も十分に考えられます。 また、バリアフリー関連の施設や設備が破損すると、車いすの患者は行動範囲が制限されますので、二次被害のリスクも高まります。

傷病者の増加・人員の不足

病院が自然災害に見舞われた場合、傷病者が増加することで医療スタッフが不足するリスクもあります。
例えば自然災害によってそれまで簡単に把握できていたことが、病室まで出向かなければならない状態となれば当然作業量が増えます。
地震が起きた際にベッドから落ちて怪我をしたり、あるいは点滴が外れてしまって症状が悪化したりする患者も想定されますが、それらをカバーするのは言うまでもなくスタッフです。
結果、スタッフが足りなくなり、医療の質の低下が懸念されます。

医薬品の不足

病院に災害が生じることで、病院までの道路等に何らかの影響が出るケースもあります。そのため、医薬品の供給が不可となることで、医薬品不足に陥るリスクも考えられます。
病院そのものは無傷ではあっても、病院までの道中で土砂崩れが起きたり、あるいは洪水によって沈没してしまった道があれば輸送はストップしてしまいます。
それでも病院内では医薬品を消費しますので、次第に不足していくことでしょう。

病院におけるBCP対策のポイントは?

病院のBCP対策は、患者の生命が関わる点を把握しておく必要があります。
もしも病院の環境に何らかの影響が出てしまった場合、患者によっては大きな負担となるだけではなく、生命の維持ができなくなるケースも考えられます。
そのため、病院のBCP対策は患者の生命がかかっている、大切なものであることを自覚しておく必要があるのです。
企業の場合、大きな被害を受けたとしてもあくまでも自社の都合です。しかし病院の場合、被害が自らだけではなく、患者に影響を及ぼす可能性もあります。だからこそ、緻密なBCP対策が求められます。