2024年度から、介護施設におけるBCP対策が義務化されます。有事であっても必要な介護サービスを継続して提供できるよう、各施設の実情に合わせた対策を練ることが必要です。介護施設のBCP義務化の理由や求められるBCP、策定の現状などについて説明します。
厚生労働省は、介護施設におけるBCPの策定を2024年度から義務化することとしました。感染症や自然災害が発生しても利用者が必要な介護サービスの提供を継続できる体制の構築が主な目的です。これまで任意で勧められていたBCPの策定には未着手の施設も少なくないため、一定の準備期間が必要になることも踏まえて2021年度から3年間の経過措置を設定しています。
厚生労働省は介護施設の具体的なBCP策定の指針として、下記のように感染症と災害のBCPを一体的に策定できることを示しています。
令和3年度介護報酬改定を議論する中で、BCP対策の策定が義務化されました。その要因のひとつとして、2019年から始まった新型コロナウイルス感染症の施設内クラスターの頻発があげられます。
新型コロナウイルス感染症には、基礎疾患がある人や高齢者が重症化しやすいという特性があるため、今後もより一層の感染防止策を強化しなければなりません。また、感染が蔓延している状況下であっても、必要なサービスを提供する体制確保のためにもBCP対策が必要です。
義務化された要因のもうひとつがここ数年頻発して発生している豪雨や台風、地震による災害への対策強化です。災害発生時の安全な避難や施設内サービス提供の継続などを目的として、BCP策定が義務付けられる動きになりました。
厚生労働省の社会福祉推進事業の一環として「社会福祉施設等におけるBCPの有用性に関する調査」が実施され、社会福祉施設等におけるBCP策定の現状が明らかになっています。
※令和元年9月9日(月)~令和元年10月9日(水)、全国社会福祉法人経営者協議会に加入している社会福祉施設等7,986施設にアンケート調査
策定施設の少なさに驚愕しますが、その他の結果も、衝撃的なものになっています。
社会福祉施設の事業種別では、全体の約40%を高齢者が利用する介護施設が占めています。社会福祉施設等全体でBCPを文書化して策定しているのは、わずか24.5%。策定していない理由としては、「事業活動の中断が重要なレベルまで達したがことがほとんどない」が全体の約30%となっています。
災害等によりインフラが途絶した場合の設備面の対策措置としては、懐中電灯や電池・カセットコンロ・ペットボトルの備蓄が全体の70%~80%。電力供給が停止した場合の対策としては、自家発電機やポータブル発電機の備えているという回答もありました。
介護施設は、利用者やその家族の生活を継続するための介護サービスを提供する重要な場所ですので、災害時であっても必要なサービスを提供できるようBCP対策を行っておくことが重要です。