病院BCPの第一歩である停電対策は、患者の生命を守るために必要不可欠。災害時、停電しても電力を供給することができる非常用電源(発電機)の種類や特徴などを紹介します。
病院の停電対策に
なぜ非常用発電源が必要なのか
近年、大型台風や豪雨、大規模地震などが頻発しています。自然災害によりライフラインが寸断されることも多く、特に途絶されがちなのが電力。電柱や変電所に直接的な被害を受けるケースが多いのがその原因と言えます。
電力の復旧には時間がかかり、停電が2~3週間と長くなることも少なくありません。病院では24時間365日患者の生命を維持する医療器具が稼働しており、非常用電源設備が整備されていなければ患者の生命が奪われてしまう可能性も出てきます。
一口に非常用発電機といっても、LPガス、ディーゼル、医療用蓄電池、太陽光発電など、さまざまな種類があります。それぞれの特徴やよいところ、弱点について説明します。
バルクやガスシリンダーに貯蔵されたガスを燃料としてエンジンを回す発電機です。エンジンを動力として回るオルタネータが電気をつくり供給されます。メリットが多いことから近年、非常用電源として注目されています。
一般的な非常用発電機として広く普及しており、ディーゼルエンジンを主機関とする発電機。軽油を燃料として稼働することで電力を供給することができます。
平時に電力を蓄えて必要な時に電力を供給できるシステム。太陽光発電システムと併用して使用されることも多く、一般家庭用とは別に病院で使用することを目的として開発されたものです。
太陽光発電とは、太陽光パネルで受けた熱を電気エネルギーに変換するシステムです。病院内の敷地や屋上などにも設置することが可能で、燃料を必要としないエコでクリーンな電力源と言えます。
ガスや化石燃料などを駆動源として、発電機から電力を生み出すシステム。排熱を給湯や冷暖房に利用することも可能です。建築設備用には、天然ガスを熱源としたガスコージェネレーションも普及しています。
設備のプロ
池田道雄
池田商会
医療施設の種類や規模の大小にもよりますが、総じて長時間稼働を可能にする非常用電源の確保が望ましいと考えます。
特に入院病棟(ICU・NICU含む)や手術設備、透析設備など命に関わる医療設備を持つ施設は、医療用UPS(無停電電源装置)に加えて長時間稼働する非常用電源の確保は最優先事項です。
選択肢は、①ディーゼル発電機+備蓄油庫 ②LPガス発電機 ③太陽光発電システム+蓄電池(常用発電) ④コージェネレーションシステム(常用発電)などのいずれか単独あるいは併用が考えられます。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、条件、目的に合わせて選定する必要があります。
プロフィール
BCPマニュアル策定、BCP設備設計、設備供給、施工管理、補助金申請代行を一括して引き受ける。非常用電源においては、災害時に少なくとも72時間以上の持続可能なエネルギー供給対策を考案・提供。
防災のプロ
髙木 敏行
(株)かんがえる防災
医療機関では災害関連死予防を行う必要があります。
停電状態になると、命に直接影響を与える医療機器が可動しない状況に陥ります。
施設を機能させるための非常用電源の確保と、医療機器を緊急的に機能させるために、相性の良い発電機を確保するなど事前準備が必要になります。
また近年では非常用電源が水没して可動しない事例も発生しています。
施設周辺のハザードマップ・災害リスクの再確認を行い、非常用電源の設置場所も検討する必要があります。
プロフィール
元消防士であり、防災資格を3種持つ(防災士【登録No.136593】、防災危機管理者【認定番号.190805】、危機管理士2級(自然災害)【登録番号N-19014】)防災のエキスパート。
災害によって失われる、人、物、時間、思い出への被害を軽減するために、必要な物を必要な形で提供するプロ。