企業が事業や経営を継続するためには、万が一の際にどう対応するかを事前に考えておくことが重要です。介護業界においてもそれは同様で、制度としてBCP計画を策定することが必要な状況にもなりつつあります。介護施設におけるBCP策定の義務化は、2021年の介護報酬改定に伴い、2024年4月1日までの間に全事業所にてBCP策定を行わなければならないと定められています。
地域によって異なりますが、BCPを策定することにより補助金や助成金を受給することができるケースがあります。例えば東京都中小企業振興公社では、「BCP実践促進助成金」としてBCPに基づく物品や設備を導入する際にかかる経費の一部を助成する事業を行っており、企業規模などによって対象額の2分の1以内もしくは3分の2以内、下限10万円・最大1,500万円の助成を受けることができます。インターネット上で「自治体名 BCP補助金」などで検索すると見つかるかもしれません。
政府系の金融機関では、中小企業庁のBCP策定運用指針によって計画に基づいた防災施設の整備などを行う場合に必要な資金を優遇金利で受けられることがあります。代表的なものをいうと日本政策金融公庫による「社会環境対応施設整備資金」があり、直接貸付で7億2千万円・代理貸付で1億2千万円まで借り入れられる可能性があります。これらは民間の金融機関でも融資制度が用意されていることもあります。
例えば新型インフルエンザなどが発生した場合における業務継続方針などをBCPに織り込んでいる場合、ワクチンの優先接種が受けられるようになります。これは厚生労働省における「特定接種(国民生活・国民経済安定分野)」というものに該当し、一定の要件を満たし事前に登録している事業者であればこの優先接種の対象になることが可能です。
厚労省では2024年度における介護報酬の改定において、感染症や自然災害などを想定したBCPを策定していない施設や事業所に対して基本報酬の減算を導入します。これはもともと2021年度における介護報酬改定において全ての介護施設にBCP計画が義務付けられたものですが、3年間の経過措置が設けられていました。この経過措置が2024年度からは適用されなくなるため、BCPを策定していない介護施設は大きなデメリットを受けることになります。
介護施設は被介護者の生命や身体、財産などの権利や利益を侵害することなく安全にサービスを提供する義務「安全配慮義務」を負っています。そのため有事の際にどのように対応するかを定めるBCP策定義務を怠ってしまった場合、この安全配慮義務違反として民事上の賠償責任を負う事になるおそれがあります。法的な責任はもちろん、道義的責任や社会的な責任を追及される可能性があることも考えると、BCPを策定しておく必要があるでしょう。
BCP(業務継続計画)の策定は、現在では介護サービス事業者に義務付けられています。しかし、これは単なる制度上の義務としてではなく、緊急時においても利用者の安全を確実に守るために必要不可欠なものです。
BCPは策定から運用に至るまで高い専門性が求められるため、決して容易な作業ではありません。既存のひな型を一部書き換えただけでは、いざという時に機能しない「形骸化した計画」に終わってしまう恐れがあります。
有事の際に役立てるためには、自組織の状況を深く反映し、他機関との連携まで踏み込んだ実効性の高い計画であることが重要です。BCP策定の際には、実績豊富な専門家やコンサルタントの活用も視野に入れ、準備を進めることをおすすめします。
以下のページではBCPのコンサルタントサービスについてまとめています。コンサルに入ってもらうべきかどうか検討している方はぜひ参考にしてください。