厚労省が提供している介護施設向けのBCP資料・動画は、初心者でもとてもわかりやすいように作成されています。それぞれ、どのような内容で構成されているのか、要点をまとめました。
介護施設・事業所向けのBCP作成をサポートする研修動画は、総論、新型コロナウイルス感染症編及び自然災害編について、共通事項、サービス類型による固有事項で構成されています。10本ある動画の内容やポイントをまとめました。
BCPは、自然災害だけでなく感染症の蔓延やテロ、大事故など、さまざまな不測の事態が発生した際に重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い時間で復旧させるための計画です。介護サービスを提供する介護施設や事業所は、利用者や家族をサポートするために、継続してサービスを提供するための対策が必要不可欠となります。
新型コロナウイルス感染症に関するBCPの作成にあたり、BCPにおける重要な取り組み、感染症BCPと自然災害BCPとの違い、介護サービス事業者に求められる役割、及びBCP作成のポイントについてまとめています。
BCPにおける重要な取り組みでは、担当者や連絡先、必要な物資を整理しておくこと、並びにこれらについて組織で共有しておくことが必要です。また、事業継続には人のやりくりが重要となるため、感染防止策が最優先事項となります。
新型コロナ感染症対策基本方針をあらかじめ策定しておくこと、また、フローチャートに沿ってBCPを作成しておくことが大切です。
平時対応としては、体制の構築や整備、完全防止対策、備蓄品の確保と合わせて、研修や訓練の実施、普段のBCPの検証見直しも必要。感染疑い者が発見されたら速やかに初動対応が実行できるようにしておきます。
また、事案への対応だけでなく、関係機関との連携や職員の確保など、感染拡大防止体制を整えておくことも大切です。
BCP作成の基本的な考え方や流れは3.入所系と同じです。ただ、基本的に施設に24時間居る利用者ではなく、外部から施設に通うという点で対策の内容が異なります。
送迎時に体調不良がみられる場合には、施設の利用を断ることも大切。毎日の検温や体調確認にはより慎重になる必要があります。保健所との連携も密にとり、場合によっては感染拡大を防止する観点から休業要請に従わなければなりません。
訪問系もBCP作成の基本的な考え方や内容、流れは通所系、入所系とほぼ同様です。訪問型の場合は、利用者の感染の有無にかかわらず職員が感染源となることも考えられるため、職員の健康管理はより重要となります。
職員に発熱などの症状が認められる場合は、出勤しないよう徹底することが大切。居宅介護支援事業所との連携などにより、対策を徹底したうえでサービスの継続提供は可能となりますが、職員の不足が予想されるため、あらかじめ部署内で人員確保体制を整備しておく必要があります。
大規模な自然災害が発生しても、介護が必要な利用者や家族を支えるためにサービスを継続することが大切であり、実現するためにはBCPの作成が重要です。BCPの概要が押さえられたら、平常時、緊急時に分けて具体的な対応や備えを整備。他施設や地域との連携についても確認しておく必要があります。
BCP作成時には、ひな形を利用することが可能であり、作成後は、定期的なシミュレーションを行うことが大切。課題を見直してBCPの修正を積み重ねることで、介護施設・事業所に適したBCPの作成が可能となります。
BCP作成の概要編として総論、平常時の対応、緊急時の対応、他施設との連携、地域との連携、それぞれの内容のポイントをまとめています。
自然災害のBCPでは、緊急時の対応はもちろん、継続したサービスを提供できるよう、平常時の対策が特に重要です。建物・設備の対応はもちろん、ライフラインが途絶することを想定した備えの強化をする必要があります。平常時、緊急時それぞれの対応項目をチェックリストにして、ひとつずつ確認して対策を図ることが大切です。
平時からの対応として、サービス提供中に被災した場合に備えて、複数の連絡先や連絡手段を把握しておくことが大切です。
また、関係機関と連携して利用者への安否確認の方法を整理しておくこと、地域とも良好な関係構築を図り、避難方法や避難所に関する情報収集も必要。災害発生時には、利用者の安全確保を図るとともに、訪問サービスなどへの変更によりサービスの提供を継続することも大切です。
自然災害発生時に、職員が利用者宅を訪問中、移動中であることを想定して、利用者への支援手順や移動の際の対応方法についてあらかじめ検討しておく必要があります。
また、甚大な被害があらかじめ想定される際は、サービスの休止、縮小せざるを得ない場合もあるため、判断基準を明確にしておくことも大切です。サービスの前倒しや避難先でのサービスの提供などについても、検討しておく必要があります。
平時の対応として、災害発生時に優先的に安否確認が必要な利用者の情報をリストアップしておく。また、日頃から他の施設やサービス事業所、地域の関係機関と良好な関係を構築し、業務継続が適切に図られるよう検討、調整しておく必要があります。
さらに、被災により事業所が長期間サービス提供を休止する場合には、必要に応じて他事務所の通所・訪問サービスに変更できるよう調整しておくこと。
厚生労働省が介護施設・事業所向けに示している自然災害BCPガイドライン。全体のポイント3つと各セクション内容の要約をまとめました。
ガイドラインの作成のねらいは、介護施設・事業所において、災害発生時であっても適切な対応を行うことで要介護者、家族などの生活の支えとなる介護サービスを継続して提供できる体制を構築することです。
介護サービス類型に応じて自然災害時の対策として、BCP作成に最低限必要な情報を整理。介護施設・事業所単位でBCPを作成することを前提としており、自然災害発生への対応事項を詳細にまとめるとともに、新型コロナウイルス感染症への対応についても触れています。
BCP(事業継続計画書)とは、自然災害や感染症、大事故やテロなどの事件、サプライチェーンの途絶など、突発的に不測の事態が発生した場合でも、重要事業の中断をしないこと、中断しても可能な限り短い時間で復旧させることを目的として、そのための方針、体制、手順などを示した計画のことです。
介護施設・事業所は事業が滞ることで、利用者だけでなく家族の生活や健康、生命の支障に直結します。他業種よりもサービス提供の維持・継続の必要性が高いため、BCP作成などにより、災害発生に備える必要があります。
防災計画とBCPは類似しているものととらえられがちですが、防災計画が災害リスクを回避・軽減することを大きな目的としているのに対し、BCPでは災害で被害を受けても重要な業務を継続できるように備えることが重要。また、活動や対策の範囲は、介護施設・事業所のみならず、委託関係先にも及ぶため、総合的に考える必要があります。防災計画と自然災害BCPの違いは以下のとおりです。
防災計画 | BCP | |
---|---|---|
主な目的 | ・身体、生命の安全確保 ・物的被害の軽減 | ・身体、生命の安全確保に加え、 優先的に継続、復旧すべき 重要業務または早期復旧 |
考慮すべき事象 | ・拠点がある地域で発生されることが 想定される災害 | ・自社の事業中断の原因となり得る 様々な発生事象 |
重要視される事象 | ・以下を最小限にすること △「死傷者数」 △「損害額」 ・従業員等の安否を確認し、被害者を 救助・支援すること ・被害を受けた拠点を早期復旧すること | ・先に加え、以下を含む △重要業務の目標復旧期間・目標復旧レベルを達成すること △経営及び利害関係者への影響を許容範囲内に抑えること △利益を確保し企業として生き残ること |
活動、対策の検討範囲 | ・自社の拠点ごと | ・全社的(拠点横断的) ・依存関係にある主体(委託先、調達先、供給先) |
介護サービス事業者に求められる役割は、利用者や職員の安全確保だけでなく、介護サービスの継続。介護施設・事業所は社会福祉施設として公共性も高いため、災害時であっても施設の機能を活かして地域に貢献することも重要な役割となります。
介護施設・事業所におけるBCP作成のポイントとして以下の4つを示しています。
また、サービス類型を問わず共通事項として自然災害BCPのフェーズ別のフローチャートを示すことでBCPの全体像をつかむことが可能です。
また、共通事項として自然災害発生に備えた対応・発生時の対応を整理。基本方針や推進体制、リスクの把握に加えて、優先業務の選定や平常時の研修、訓練の必要性についてもまとめています。さらに、平常時と緊急時に分けて必要となる対応について具体的に説明。特にライフラインや通信が途絶した際の対応は重要です。
次に、自然災害に備えた対応や自然災害発生時の対応について、通所、訪問、居宅介護支援の3つのサービス類型ごとに配慮をすべき固有事項をまとめています。
提供するサービスの違いにより、必要となる備えや対応が異なるため留意が必要です。最後の部分には、自然災害と新型コロナウイルス感染症の蔓延という複合災害への対策について参考となる考え方が示されています。