BCPの必要性についてまとめています。自然災害などの緊急事態が起こると、長期間にわたって商品やサービスの提供が滞り企業の存亡に関わる大きなリスクに。頻発する自然災害や被害状況などを考慮しながら、BCPの必要性について考えてみました。
BCPとは、自然災害や感染症の蔓延、大事故やサプライチェーンの途絶など、突発的に不測の事態が発生してもリスクを回避するとともに、重要な事業を中断せず、可能な限り短い期間で復旧させるために必要なプランです。企業や病院、工場や介護施設など、職種を問わず様々な場所でBCPが求められているのはなぜでしょうか。
災害などが発生すれば、人命を最優先に守るためのリスク回避が必要です。しかし、ここで言う「会社、従業員を守る」とは、単に建物や設備、従業員の命を守ることではなく、前もって緊急事態に備えることで、会社経営や従業員の雇用を維持することを意味します。
東日本大震災が発生した際には、中小企業の多くが貴重な人材や設備を失い、廃業せざるを得ない状況となりました。また、被災状況がそれほどひどくなくても、復旧に時間がかかって商品やサービスを提供することができず、その結果として事業縮小や従業員の解雇を迫られたケースも少なくありませんでした。そのため、お客様や取引先を守り、従業員の雇用を守りたいのであれば、平時にBCPを策定しておく必要があります。
緊急時には多くの企業が対応に混乱するため、いかに早く商品やサービスの提供を復旧させるかが企業の生き残りを左右することになります。そのためには、被害を受けても重要な業務だけは継続できる体制の維持、遠隔地を利用した生産体制の確保、サプライチェーンの確保などが必要です。
緊急時にいち早く対応・復旧するだけでなく、被害を受けてもどのような行動の選択肢があるかを明確にしておくことが大切。BCPを策定していれば、緊急対応のスピードだけでなく、事業の正確性を向上させることも可能です。
BCPに取り組むことで、緊急時であっても商品やサービスの提供が期待できます。その結果として、取引先やお客様から評価され、新たな顧客の獲得や事業拡大が可能となることから、企業価値の向上や平常時の企業競争力の強化にもつながるでしょう。
近年は豪雨、台風による水害リスクが上昇しており、地震も頻発。今後大規模地震の発生も想定されています。東日本大震災の際には、電力や部品調達などの外部サービス断絶により、企業の生産活動が多大な影響を受けました。平成30年度には、西日本豪雨、台風19~21号、北海道胆振東部地震などの大規模な災害が続けて発生し、中小企業やサプライチェーンに大きな影響を与えています。
※以前と比較して豪雨の発生率は1.4倍に上昇しています。
台風7号や梅雨前線の影響により、西日本を中心に全国的に広範囲で記録的な大雨を記録。各地に甚大な被害をもたらす。
近畿地方から中部地方にかけて、広範囲にわたって交通インフラや建物、設備などに大きな被害をもたらした。
北海道胆振地方中東部を震源としてM6.7の地震が発生。道内の火力発電が緊急停止し、電力の需給バランスが崩れたことを要因として道内全域で停電が発生。市民生活だけでなく、産業、物流などに大きな被害をもたらした。
※中小企業被害額は、激甚災害指定に関わる被害調査時点において、自治体から直接被害として報告のあったもののみ。
感染症の蔓延により平時の業務体制を維持できず、商品やサービスの提供ができずに事業縮小や廃業を余儀なくされるケースもあります。
南海トラフは、日本列島が位置する大陸のプレートの下に、海洋プレートのフィリピン海プレートが沈み込んでいるエリアです。2つのプレートの境界に蓄積された歪みを原因として、過去にもたびたび大地震が発生しています。
約100~200年の間隔で起きることを想定すると、30年以内に70~80%の確率でマグニチュード8~9クラスの南海トラフ巨大地震が起こる可能性が。同様に首都直下型地震も30年以内に70%の確率でマグニチュード7程度の大地震が起きる可能性があります。
ちなみに、それぞれの地震の被害の想定(人的/経済被害)は以下の通りです。
特に南海トラフ地震では、甚大な被害が想定されています。しかし、事前に想定されている災害であるため、BCPを策定、実行することで地震発生後のスタートアップをスピーディーかつ充実した内容で実施することが可能です。
設備のプロ
池田道雄
池田商会
『阪神淡路大震災、東日本大震災規模の大災害に見舞われた場合、御社は、「事業継続」できますか?』
『また、そもそも「存続」できますか?』
被害は尋常でないことは言うまでもありません。
BCP対策は、そもそもちょっとした災害を想定しているのではなく、上記のような大規模災害を想定した対策を打つことを言います。
それは、多くを失った被災地でいち早く事業復帰、地域貢献することによる企業の信用の獲得や新たな顧客の獲得を意味し、企業価値を高めるための戦略となります。
私は、BCP対策は長期的な経営戦略の一環であり、設備投資はあくまでその方法論であると考えています。
プロフィール
BCPマニュアル策定、BCP設備設計、設備供給、施工管理、補助金申請代行を一括して引き受ける。非常用電源においては、災害時に少なくとも72時間以上の持続可能なエネルギー供給対策を考案・提供。
防災のプロ
髙木 敏行
(株)かんがえる防災
BCPを作成していないことで、職員間での災害想定が統一されておらず、管理職の指示頼りになります。管理職は負担が増加し疲弊します。
一般職についても何を行うべきか優先順位が分からないことで災害対応が非効率になります。
結果的に初動対応が遅れ、後手後手の災害対応になり被害が拡大することで事業の再開が遅れます。
熊本地震発災年度から4年度先まで連続して企業が10件以上倒産しています。
このことから事業再開の遅れは、数年先まで影響するといえます。
BCPを作成に伴い、早期に事業を再開する方法論を見つけることができ、企業の倒産リスクを見直すことができます。
プロフィール
元消防士であり、防災資格を3種持つ(防災士【登録No.136593】、防災危機管理者【認定番号.190805】、危機管理士2級(自然災害)【登録番号N-19014】)防災のエキスパート。
災害によって失われる、人、物、時間、思い出への被害を軽減するために、必要な物を必要な形で提供するプロ。