首都直下型地震とは、東京都、茨城県、千葉県、埼玉県、神奈川県、山梨県を含む南関東地域のいずれかを震源に起こる、マグニチュード7クラスの巨大な直下型地震のことです。
江戸時代から1923年に発生した関東大震災までの過去の地震に関する記録をもとに、将来、首都直下型地震が発生すると予想されています。
首都直下型地震の被害想定を、被害エリア・被害人数・建物への被害・経済被害の4つの観点から解説します。
震源地ごとのマグニチュードは、以下のように想定されています。首都中枢機能への影響が最大になると考えられているのは、都心南部直下が震源地となる場合です。
震度分布としては、以下の通り予測されています。
想定されている死者数は、約2万3,000人。そのうち、火災が原因で死亡すると予測されているのは約1万6,000人です。また、けが人は約12万3,000人、救助が必要になる人は約5万8,000人、避難者数は約720万人に上ると推計されています。
冬の夕方で風が強いときに首都直下型地震が発生した場合の建物への被害予測は、全壊・焼失する建物が最大で61万棟、このうち火災で焼失するのは約41万2,000棟です。
また、電力や通信、上下水道、交通などのインフラやライフラインへの影響も大きく、都心の一般道には深刻な交通麻痺が発生し、地下鉄は1週間、私鉄や在来線は1ヶ月ほど開通までに時間を要するとされています。
経済被害は、建物が壊れるなど直接的な被害は約47兆円、企業の生産活動やサービスが低下する間接的な被害は約48兆円、合計約95兆円と予測されています。これは、国の年間予算に匹敵する金額です。
政府の地震調査委員会によると、マグニチュード7程度の大地震が今後30年以内に70%の確率で起きると予測されています。
国土交通省が発表している首都直下型地震の地震対策計画は、大きく「応急活動計画」と「予防的対策」の2つに分けられます。
「応急活動計画」としては、まず、指揮命令系統の確立や消防、警察、自衛隊、各地方公共団体、災害協定を締結している建設業者などとの連携、食料や燃料などの確保や輸送、配分を行い、活動可能な体制を構築します。
そのほか、建物倒壊・火災・津波からの避難支援、避難者や帰宅困難者への避難誘導、交通機関利用者の安全確保、スピーディーで正確な情報収集・発信、迅速な救命・救助活動、二次被害の防止などが計画されています。
「予防的対策」の内容は、住宅や建築物の耐震化支援や火災・土砂災害対策、津波からの避難路や避難場所の確保、防災訓練・防災教育の実施などです。
首都直下型地震に備えたBCP事例として、鹿島建設株式会社と順天堂大学医学部付属浦安病院の2つの事例を紹介します。
鹿島建設では、2021年2月、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言下の休日朝7時に東京南部を震源とする最大震度7の首都直下地震が発生したことを想定して、BCP訓練を実施しました。工事現場における初動対応としては、作業員の避難、現場被害の点検、仮設足場の倒壊や危険物の流出などの二次災害防止策を実施。従業員不在時の異常検知手段や検知後の対応についても整備しています。
さらに、テレワークを実施している従業員や派遣社員も含めた連絡体制を確認。復旧活動拠点に徒歩で参集できる従業員の初動対応についても再確認しました。
順天堂大学医学部付属浦安病院がある浦安市は、高層マンションが立ち並び、日本最大のテーマパークが位置する都市です。巨大地震が発生した場合は近隣で多数の傷病者の発生が予想されるため、BCPの策定とBCMを実施する「BCM運営委員会」を組織して体制を整えています。
BCM運営委員会は、災害マニュアルの更新や防災整備計画、研修・訓練の企画・事後検証、審議事項などの報告と決議を行う委員会です。BCM運営委員会のもとに、自衛消防隊会議と災害医療派遣調整会議を置いて、院内・院外災害対策を強化しています。