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停電対策として有効な方法は何か?

2019年9月9日に関東へ来襲した台風15号は、各地に甚大な被害を残しました。とりわけ広域で発生した停電の影響により、個人住宅はもちろんのこと、複数の大企業の工場も操業停止。ソニーではPS4などを手がける木更津工場(千葉市)が、日産自動車では主力四輪を手がける追浜工場(横須賀市)などが操業停止を余儀なくされました(※)。ほかにも、さまざまな業種の多くの工場・オフィスが、その機能を停止しています。

日本は自然災害の多い国ですが、自然災害の発生を予想することはできません。災害が発生しても最低限の企業活動を維持させるため、あらかじめ万全のBCP対策をしておきましょう。

※出展:Bloomberg「ソニーや日産が工場停止、企業への影響拡大-台風15号が関東上陸」

停電対策に関わる設備品の準備

発電機

太陽光発電機

太陽光発電システムを導入することで、停電時に一定の電力を確保できます。日中に作った電気を蓄電池にためておけば、夜間や天気の悪いときでも電気を使用できるでしょう。

ただし太陽光発電システムには、高額な導入コストが必要です。維持していく以上は、定期的なメンテナンス費用も避けられません。もとより、天候によって発電量が不安定になることは、太陽光発電システムの大きな弱点とされています。

ガス発電機

ガス発電機とは、ガスを燃料として稼働するエンジンの力を利用して発電するシステムです。ディーゼルエンジンとは違って燃料の劣化が小さく、かつLPガスであれば災害時でも供給されやすい点がメリットとなるでしょう。

一方で、導入コストが高い点や定期的なメンテナンスが必要となる点がデメリットと言えます。

ディーゼル発電機

ディーゼル発電機とは、軽油を燃料にして稼働する発電装置を言います。省スペースながらも発電効率が良く、かつ燃料単価が比較的安い点がメリットです。

一方で燃料の備蓄が必要になることや備蓄した燃料が劣化しやすいこと、稼働させる際に排気ガスが出ることなどがデメリットとなるでしょう。

風力発電機

風力発電機とは、風の力でブレードを回転させることで電気を生み出す装置を言います。自然に存在する風が電気の源となるため、ガスや軽油とは違い、災害時でも電力を無限に作りだせる点がメリットです。他の再生可能エネルギーに比べて発電効率が良い点もメリットとなるでしょう。

一方で、風が弱い日は多くの電気を得られないことがデメリット。逆に風が強すぎる日には、ブレード破損の恐れがあるので装置を停止しなければならない点もデメリットになるでしょう。

蓄電池

太陽光発電システムと蓄電池

蓄電池とは、電気をためておく専用の装置を言います。電気代が割安な夜間に充電し、ためた電気を電気代が割高な日中に回すという使い方が一般的です。

太陽光発電システムと連携させれば、停電時でも充電できる点がメリット。ただし、太陽光発電システムも蓄電池もコストが高額なので、簡単に導入できるものではありません。もとより、天候が悪ければ発電量は低下します。

災害対策用で72時間

災害対策として非常用電源を確保する場合、一つの目安として「72時間の停電に耐えられる非常用電源装置」を確保すべきとされています。

人が飲まず食わずで過ごせる限界は約72時間とされ、災害時の人命救助における基準とされていますが、この72時間のイメージとリンクさせる形で非常用電源装置にも72時間という基準が充てられたようです。

ただし、大規模災害が発生した際、電力供給が72時間で完全復旧することはまれで、多くは1週間から10日間ほどかかるのが実情です。

選択肢はまだまだある

すでに家庭用蓄電池は広く普及していますが、一方で産業用蓄電池も徐々に普及が広がっています。

産業用蓄電池は材質により、鉛蓄電池(自動車のバッテリーなど)、ニッケル水素電池(充電乾電池など)、リチウムイオン電池(PCや携帯電話のバッテリーなど)、NAS電池(主に産業用)の4種類があります。

燃料電池

エネファーム

エネファームとは、ガスから取り出した水素と空気中の酸素とを反応させて電気を作るとともに、この電気の力でお湯を沸かすこともできる装置を言います。

発電している最中に停電が発生しても発電を継続できますが、発電していないときに停電が発生すると発電できなくなります(蓄電池や発電機などの外部電源につなげれば起動可能)。

産業用はこれから

エネファームは家庭用の燃料電池ですが、近年、エネファームの数倍の出力を持つ産業用・業務用燃料電池も発売がスタートしました。

産業用・業務用燃料電池は、アメリカでは比較的普及が広がっているものの、日本ではまだまだ黎明期の段階です。アメリカにならい、BCP対策の有効な設備の一つとして、日本でもその普及が期待されています。

燃料電池の主なメーカーは東芝やブルームエナジー

燃料電池の主なメーカーは、東芝やパナソニック、富士電機、JX日鉱日石エネルギー、ブルームエナジー(米国)などです。

燃料電池ベンチャーのブルームエナジー社は、全米最大規模の燃料電池を設置しているApple社(米国)のデータセンターに産業用燃料電池を供給しています。

小型発電機

ポータブル発電機

ポータブル発電機とは、主にガソリンを燃料にして発電する小型の装置を言います。やや重量があるものの持ち運びが不可能ではないため、小規模な施設などでは、災害時のBCP対策の一助になることでしょう。

なお、ガソリンを燃料としたポータブル発電機は排気ガスが排出されるため、屋内での使用ができません。一方で、あらかじめ電気をためておく「ポータブル電源」であれば排気ガスの排出がないので、屋内でも使用が可能です。

ポータブルガス発電機

鍋料理などに重宝され、コンビニなどでも販売されている「カセットボンベ」をセッティングして発電できる「ガス発電機」という装置があります。小型で持ち運びができるため、ポータブル発電機の一種とされています。

ガソリンとは異なり、燃料の劣化が遅いことや燃料を手に入れやすいことがメリットです。一方で、ガソリンと同様に排気ガスを排出するため、屋内での使用ができない点がデメリットとなります。

ポータブル発電機から蓄電池へ充電

蓄電池を使い切った後でも、ガス燃料などのポータブル発電機で作った電気を蓄電池に充電することができます。すでに一部のメーカーからは、カセットコンロ用のポータブル発電機と蓄電池がセットになった商品も発売されています。

なお、カセットボンベで蓄電池を満充電させるためには多くの本数が必要です。ローリングストックなどの形で、あらかじめ多くのカセットボンベを常備しておく必要があるでしょう。

ハイブリッド型発電機

ポータブル発電機の多くはガソリンを燃料としていますが、ガソリンは半年程度で品質が劣化するため、停電対策として買いだめして長期間保管しておくことができません。一方でLPガスは10年以上にわたり自然変質がないことから、長期保管用としては理想的な燃料と言えます。

昨今では、ガソリンとガスの両方で発電できるハイブリッド型の発電機も注目されています。

停電対策でできること

エアコン

冬場に停電でエアコンを使えなくなった際の一般的な対策としては、厚着をしたり毛布を活用したり、寒い外気を屋内に入れないよう開口部をしっかりと閉じたりなどです。

逆に夏場に停電した際には、屋内の風通しをよくしたり薄着をしたり、保冷剤等で体を冷やしたりなどすることが一般的な対策です。

これらの対策のほか、BCP対策としては以下に挙げる方法が有効です。

ガス空調(GHP)

ガス空調(GHP)とは、簡単に言えば、ガスを燃料にして電力を作り空調を稼働させるシステムのこと。空調だけではなく、あらかじめ設定されたコンセントからも電力が供給されることから、照明やテレビ、パソコンなども使用可能となります。停電時には自律運転をさせることが可能なので、BCP対策としては大変有効となるでしょう。

発電の際に生じた廃熱も利用することができるなど、エコなエネルギーシステムとして推奨されています。

BOS型ガスコージェネレーションシステム

「コージェネレーションシステム」とは、何らかの熱源により電力と熱を同時に生産・供給できるシステムのこと。「BOS型ガス」が頭に付いて、「停電時でもガスを熱源にして電力と熱を同時に作り出せるシステム」という意味になります。

ガスの供給さえ安定していれば自家発電することが可能で、かつ廃熱を利用することもできるため、大変有効なBCP対策となるでしょう。

過不足ないBCP対策に向け専門家に相談を

停電対策はBCPに欠かせない対策の一つとなりますが、実際にBCPを有効なものとするためには、ほかにもさまざまなフェーズに応じた多くの対策が必要となります。事業者の規模や特徴によって、必要な対策内容も異なるでしょう。

自社に必要なBCP対策を過不足なく整えるため、まずは専門家に相談することをおすすめします。

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