従業員や顧客、利用者の命とともに事業継続により会社を守ってくれる電気設備のBCP対策。業種別でどのような対策が必要なのか、非常時に想定される状況や対応例などについて説明します。
電気設備のBCP対策において、業種別にどのような違いがあるのか、対策のポイントの違いや想定される状況、対応事例を紹介します。
電気エネルギーを必要とする製造設備・機器及び容量・稼働時間をリストアップ。非常時の運転稼働の可否と優先順位を決めておく。
一時的な停電の場合、復旧時の通電により二次災害が発生する可能性があるため、災害の前後での電気使用状況を把握しやすいよう稼働設備リストを作成する。
災害に伴う停電により、防犯システムの機能に障害が発生する可能性があるため、災害時の保安電力による機能確保を図ることが大切。
商品の保管において冷凍、冷蔵、乾燥などが必要となるため、停電時の対応策を検討する必要があります。非常用電源または代替施策の確保が可能な範囲及び、保管温湿度、劣化時間などにより商品をリスト化する。
適切な搬送、保管を継続できる対策を確認する。
災害時のエレベーター運用に注意が必要です。通常、大きな揺れを感知するとエレベーターは停止しますが、中には稼働している場合もあります。専従技術管理者は、適切な手順にそって安全を確認のうえ運転を停止し、利用停止の情報を掲示します。
照明のほか、衛生設備の電源も非常用電源で確保することが不可欠です。医療施設においては、災害時であっても入院患者及び治療中の患者の生命維持に必要な設備器具への電力供給ができる対策を講じなくてはなりません。
設備機器、及び災害時使用の優先順位を(使用時間も含めて)リストアップしておく。さらに、緊急治療等の電源確保枠に電源シフトが可能となるようにしておく必要があります。
災害が発生すると、商品や陳列棚の倒壊などにより、買い物客や従業員の負傷、避難時の転倒・混乱が予想されるため、あらかじめ対策を講じておく必要があります。
生活必需品や日用品を取り扱う場合には、早急な営業再開、完全復旧が求められる。そのため、店舗や電源が使用できない際には重要商品の検討、販売場所やレジを使用しない工夫などにより、営業を継続します。
災害発生から3日間は最も混乱しやすい傾向にあります。建物の損壊や設備被害がある中でも治療継続し、患者の安全を確保しなければなりません。
帰宅困難な外来患者が院内に留まるとともに傷病者が殺到することも想定する必要があるでしょう。
ライフライン、人員、医療敷材を確保し、必要に応じてトリアージを行うことも検討します。
事業を継続しながら、在勤者や来訪者の安全を確保する必要があります。ビルの設計段階から耐震性能や制震構造に配慮するとともに、帰宅困難者の一時受け入れ、災害情報の受発信などの連絡設備なども必要です。
断水時でも使用できるトイレ、自家発電設備によるエレベーターの使用など、垂直非難の防災拠点となるような備えをしておきましょう。
非常用食料、医療品、工具などの備蓄も必要です。
宿泊施設は、もともと建築基準法や消防法により厳しい規制を受けているため、災害時に最も重要なことは宿泊客の安全確保です。従業員が少なくなる夜間などにおいても、確実、安全に避難できるような避難経路、避難誘導、安全確保、安否確認、連絡方法を明確化しておく必要があります。
旅行代理店や近隣宿泊先との連携により、受け入れの調整や宿泊客の安全な帰宅に配慮しましょう。
在校時はもちろん、校外学習や修学旅行などの学校行事、休日、夜間、通学、などのさまざまな場面を想定し、教職員がとるべき指示や行動を定めておく必要があります。
学校は指定避難所として一般に開放することが多いため、児童生徒の引き渡しや点検、復旧だけでなく、救護、食料備蓄など、避難所としての機能を強化しておくことも重要です。
災害により構造躯体に損傷が認められない場合でも、ドアが開かない、エレベーターや機械式駐車場が作動しない、水が使用できないなどの不具合が生じる可能性があります。
けが人や閉じ込められている人などがいないかを確認するとともに、水漏れや破損、危険個所の確認を行う。住民の安否確認とともに、子どもや高齢者などのケア、トイレや食事のサポートも必要です。
初期消火、ライフラインの元栓を締めるなどは住民個人の対応に委ねられるため、平常時にマンションの災害対策組織の確認、住民の役割分担の明確化を行っておくことも大切です。
施設設備の被害状況の確認などを行い、ライフラインの途絶で災害時機能できなくなる不具合について事前にリストアップしておきましょう。
緊急時に事業を継続するためには、機器の転倒防止、ガラスの破産防止など、被害を最小限に抑えるための平常時からの備えが必要です。
あらかじめ重要事業、優先取引先などを洗い出し、非常時でも優先的に商品・製品を供給できるよう、サプライチェーンとの調整も行っておきましょう。
遠方からの応援協力を想定して、日頃から宿泊先の確保などが重要です。
非常時に電源を確保するためには、大きく分けて電力を蓄える、つくるという2つの方法があります。それぞれの特徴をみてみましょう。
産業用蓄電池は、10kWh以上の容量の電力を蓄積することができます。ただし、工場などでは500kWh以上の容量を要する場合もあり、設備投資や平常時の電力確保に負担がかかることも。災害時、一度電気を使いきったら電力供給ができなくなることにも注意が必要です。
非常用自家発電機には、太陽光発電、ディーゼル式発電機、LPガス式発電システムなど、さまざまな種類があります。導入に費用がかかりますが、なかには助成金や補助金を活用できるものも。最近では、敷地内に燃料を確保でき、72時間以上の連続稼働が可能なLPガス式発電システムも注目されています。
災害時に命や事業を守るためには、非常用発電機の導入が不可欠となります。災害時でも電力を必要とする設備や機器をリストアップし、いざという時に確実に稼働するよう定期的なテストやメンテナンスをしておくことが大切です。電気設備のBCP対策の第一歩として、非常用に電力供給が必要となる設備や機器のリストを作成してみましょう。
各業種ごとの非常用電源に関する記事は以下に掲載しています。
設備のプロ
池田道雄
池田商会
IoTを駆使した監視システムが一般化しつつある現代の設備は、利便性が高まる一方で想定リスクに対応する設備も多様化し、専門性が高まり、多くの設備が連動し、複雑さを極めています。
発電設備一つとっても、燃料がディーゼル(軽油)、重油、天然ガス、LPガス、太陽光、バイオマス、燃料電池などがあり、常用発電・非常用発電に分類され、発電だけする設備だけでなく、発電時の排熱を空調や温水に利用するコージェネレーションシステムや発電機能が搭載された空調設備など様々です。
本業に時間を割く事業経営者は当然ですが、担当者ですら各設備業者の提案を解読するのに必死で、買い手の負担が増すばかりです。
今後、このような先端技術が集約された設備は、維持・管理にも多額のコストが発生することが多いため、複数の設備のイニシャル及びランニングコストを想定したプランニングができる総合設備業者あるいはコンサルタントに相談することが早期の解決策だと思います。
プロフィール
BCPマニュアル策定、BCP設備設計、設備供給、施工管理、補助金申請代行を一括して引き受ける。非常用電源においては、災害時に少なくとも72時間以上の持続可能なエネルギー供給対策を考案・提供。
防災のプロ
髙木 敏行
(株)かんがえる防災
私は災害現場を経験しています。
現場活動を行う際に安全確保をまず行います。安全確保はひとつの方法だけではなく様々なリスクを考え、バックアップを基本的に行ないます。このことは企業でも同じことが言えます。
ひとつの方法、ひとつの設備だけに頼ると、不測の事態に対応できず、事業の継続や事業の再開が困難になります。
既存設備のメリット・デメリットを見直し、効率的に通常業務や災害対応が行える設備を検討することは、災害発生頻度が高い現代に必要な対策です。
プロフィール
元消防士であり、防災資格を3種持つ(防災士【登録No.136593】、防災危機管理者【認定番号.190805】、危機管理士2級(自然災害)【登録番号N-19014】)防災のエキスパート。
災害によって失われる、人、物、時間、思い出への被害を軽減するために、必要な物を必要な形で提供するプロ。