緊急事態に備えてマニュアルを作成しておくことは大切です。何も対策を取っていなければ混乱を招き、企業の存続も難しくなります。損害を最小限におさえるためにBCPマニュアルを作成しておきましょう。BCPマニュアルの作成手順を紹介します。
BCPマニュアルとは、自然災害やサイバー攻撃、情報漏洩、社内の不祥事など、緊急事態が発生したときに事業が継続できるようBCP の手順をまとめたものです。手順には、復旧方針や具体的な方法を記載します。
緊急事態が発生すると社内は混乱します。正常な判断も難しくなるでしょう。事前にマニュアルを作成しておけばスムーズに対応することができます。事業や業務を早期に復旧させるためにはBCPマニュアルは必要です。以下ではBCPマニュアルを策定するメリットや策定手順について解説しています。
緊急事態が発生した場合、マニュアルがなければ社内は混乱に陥り冷静な判断もできなくなるでしょう。対策をとっていなければ事業や業務の継続も困難になります。BCPマニュアルには想定されるリスクが記載されているため、マニュアルを作成しておけば、適切な対応をとることができます。早期復旧で被害を最小限におさえることが可能です。
緊急事態が起きたときに対策を取っていなければ、とくに中小企業の場合は廃業に追い込まれるかもしれません。企業が倒産してしまったら従業員も解雇せざる得なくなるでしょう。企業が災害に遭うと収入が減り資金繰りが難しくなることもあります。操業率が落ちれば事業の縮小や廃業を考えなければなりません。会社と従業員を守るためにも備えが必要です。
トラブルが起きた際、素早く対応できる企業は信頼されます。早期復旧が可能な企業として取引先から高い評価を得ることができれば、新しい仕事のチャンスが巡ってくるかもしれません。新たな顧客獲得にもつながるでしょう。BCPマニュアルを作成することは企業にとってもプラスになります。
自然災害(台風・地震・落雷)や外的要因(取引先の倒産・サイバー攻撃・通信障害など)、内的要因(社内の不祥事・人的ミス・機械の故障など)で想定されるリスクをすべて洗い出します。大まかではなく具体的に考えることが重要です。記入漏れがないように注意しましょう。書き出すことが、トラブルが起きたときの対処法を導き出す第一歩となります。また、災害やトラブルが起きて事業が中断した場合、どのような影響があるのかも詳しく調べておくといいでしょう。
洗い出したリスクすべてに対応するのは困難です。リスクに優先順位をつけて、それを主な復旧対象とします。優先順位の判断基準は、 「中核事業が影響を受ける可能性が高いと思われる災害」「想定した災害により影響を受ける中核事業上の工程・箇所」。優先順位をつけるポイントは「発生する可能性」「発生頻度の高さ」「発生した際の損害レベル」です。例えば、地震でも活断層に近いのか、海に近いのかによって想定されるリスクは異なります。
想定されるリスクにおいて、どのような場合にBCPを発動するのか基準を決めます。BCP マニュアルを策定しても、従業員がいつ発動されたのかが分からなければ効果を発揮することができません。現場も混乱するでしょう。各自の判断で行動する可能性もあります。発動する基準を「震度5以上の場合マニュアルを発動させる」というように、誰でもわかるように設定してください。発動する基準を明確にしておくと従業員も行動しやすいでしょう。
事業を継続していくには、どの事業から復旧させるか優先順位を決めます。事業の幅が広い企業ではすべての事業を同時に復旧させることはできません。会社を存続していくために重要なのは中核事業です。中核事業が最優先になるように決めておくといいでしょう。中核事業は、収益額や他社との関係性、社会的重要性などから絞り込みます。優先順位をつけることによって、緊急事態が起きた場合でも効率よく復旧することができます。
緊急事態が発生した場合、どのくらいの時間で、どのレベルまで復旧させるのかを決めておきましょう。復旧目標を立てる場合は、目標復旧時間と目標復旧レベルを用います。目標復旧時間とは、中断した業務やシステムを復旧させるために目標とする期限です。目標復旧レベルは、中断した業務をどのくらいまで復旧させるのか示すものです。目標復旧レベルが低いほど、業務の復旧が早くなります。会社にとって必要なレベルを見極めることが重要です。
事業を元通りに再開させるためにはどのような行動をとればよいのかを決めます。初期対応・業務仮再開・本格復旧と3段階にわけておくとわかりやすいでしょう。初期反応は、被害状況を確認して安全を確保することです。従業員の安否確認や二次被害の防止、業務継続用の環境の確保も併せておこないます。業務仮再開は、少しずつ業務を再開して本格的な復旧に向けて準備を整えます。例えば、代替拠点や責任者が不在の場合の代行者など、マニュアルに代替手段を示しておくといいでしょう。本格復旧では、緊急事態発生後から本格的に業務を再開するまでの仕組みを整えます。
非常事態が起きると現場は混乱します。訓練をしていても思い通りにいかないこともあるでしょう。先頭に経って指揮をとる人がいないという事態も考えられます。BCP マニュアルを策定する際、現場の指示をおこなう責任者を決めておきましょう。基本的に責任者は企業のトップが努めます。責任者が不在の場合を想定して代行者も決めておくといいでしょう。
非常時に従業員が優先すべき業務や確認しなければいけない項目など、具体的にどう行動すればよいのかを決めておきます。マニュアルがあればその通りに動くことができるため、冷静に対応することが可能です。従業員自身で判断する場合の基準も決めておくといいでしょう。さまざまなケースを想定して、ケースに合った行動がとれるような体制を整えておくことが重要です。
マニュアルや計画というものをゼロから作るのは非常に大変ですので、中小企業庁や商工会議所が公開している便利なテンプレートを活用するのも手です。BCP計画を作成する際に役立つマニュアル・テンプレートをご紹介します。
中小企業庁では「中小企業BCP策定運用指針」を公開しています。これは規模がさまざまな中小企業において、投入できる時間・労力に応じて4通りのコースが準備されており、入門コースではワードファイルにそって帳票類を取りまとめていくと作成できるようになっています。コースごとに少しずつ内容がレベルアップしていきますので、作成しやすいテンプレートから挑戦してみてください。
入門コースにおいてはBCPの策定や運用にあたり、最低限必要と思われる要素が抽出されています。経営者が一人で1時間から2時間程度かけると作成できるようなボリューム感となっており、経営者の頭の中にある考えを様式に合わせて入力することでBCP計画の作成を行うことが可能です。
基本コースがもっともスタンダードなものであり、BCP計画の策定や運用を始めようと考える多くの経営者に向けたコースとなっています。経営者が一人で1日から2日程度かけて作成できるものとなっており、目標や緊急連絡先などといった具体的な情報を入力しながら策定・運用を行います。
中級コースにおいてはBCPサイクルに関する理論を学びながら自社におけるBCPを策定・運用したい経営者に向けたコースとなっています。経営者一人では3日から5日、サブリーダーも含めると2日から3日間程度で策定できるものとなっています。こちらもBCP様式に目標復旧時間や緊急連絡先などといった具体的な情報を入力しますが、体系的に策定・運用できるという特徴があります。
上級コースは経営者とサブリーダーを含めた数人で延べ1週間程度かけて作成するものとなっています。BCP計画を既に作成している企業が複数の他企業と連携して取り組んだり、今より深い分析を行うことによりBCPへの取り組み、策定・運用をさらにステップアップさせるためのコースとなっています。
参考元:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/
テンプレート:中小企業庁
「中小企業BCP策定運用指針 7章 BCP様式類(記入シート)」
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/download/bcppdf/bcpguide_07.pdf
NPO法人の事業継続推進機構が作成している「中小企業BCPステップアップ・ガイド(4.0版)」では、中小企業の方々を想定しながら災害や事故などに備えたBCPの作成・運用に向けた取り組みに関して、わかりやすくなるよう全部で3部のステップに分割して示したものとなっています。ここではそれぞれのステップの内容について解説・紹介しています。
第1部は「BCPの基礎になる防災対策の実施」とされています。内容としてはBCPとは何か、直面する災害・事故リスクは何か、緊急時の対応体制や指揮命令系統がどうかなどといったものになっています。それぞれについて検討を行うことにより、BCPの策定を進めることができるようになっています。
第2部では「重要業務を認識して簡略BCPを策定する」となっています。自社における重要業務の選定やBCPにおける特徴の把握、目標復旧時間の設定など、第1部に比べると具体的な内容について検討を行うこととなります。他にもキーパーソンの代理確保の体制や情報・通信システムの途絶リスク把握・対策など、事業継続のために必要な根幹部分について触れている形になります。
第3部は「本格的な事業継続計画(BCP)に向けて」と題しており、分析を踏まえた目標復旧時間の経営判断や詐害・事故時における財務的な安定性の検討・改善などについて記載がされています。BCPの運用や周知・定着、訓練と見直しなど運用場面における内容についてもより詳細に記されています。3部までをしっかりと網羅することができれば、より強固なBCPの策定を行えるでしょう。
参照先:事業継続推進機構「中小企業BCPステップアップ・ガイド」
http://www.bcao.org/data/01.html
関東地方ではかつて関東大震災という大きな災害があったことから、東京商工会議所ではその経験や教訓を活かしてBCPに関連しる防災対策支援などを行っており、中にはBCP策定に関するパンフレット・ガイドが紹介されています。
本編では「あなたの会社が生き残るための戦略づくり」と題しており、東日本大震災の事例から学ぶとしてBCPに関する事例をいくつか紹介しています。また、その他にも基本方針を元にBCPを作る、具体的な生き残り戦略を考える、BCPのマネジメントを考えるなど策定にあたって必要な要素が盛り込まれたガイドとなっています。
様式集で事業一覧や事業・業務依存関係図、継続・普及に不可欠な資源一覧などさまざまな様式が紹介されています。他にも定量的な影響一覧や定性的な影響一覧、許容中断時間一覧などBCP策定に使える具体的な様式を参考にすることができます。わかりやすい色使いのテンプレートが揃っていますので、ぜひチェックして下さい。
参考元:東京商工会議所「BCP策定ガイド」https://www.tokyo-cci.or.jp/survey/bcp/
テンプレート:東京商工会議所「BCP策定ガイド(様式集)」
https://www.tokyo-cci.or.jp/survey/bcp/file/bcp_130314b.pdf
内閣府が公開している防災情報に関するWEBページでは、建設業団体や不動産協会、電子情報技術産業協会などといった各業界で発行しているガイドラインが紹介されています。中には取り組み事例に関する紹介もありますので、さまざまな事例やテンプレートを見たうえで自社にぴったりのBCP策定・運用を行いましょう。
参照先:内閣府「防災情報のページ」
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/sk_06.html
BCPマニュアルを策定しておくと、いざという時にどう行動すればよいのか、状況判断とそれに伴う対応を整理してあたることができるでしょう。下記のページで具体的なBCP策定のフローを紹介していますので自社に合ったマニュアル策定の参考にしてみてください。