「危機管理」の対象となるのは、地震、津波、洪水といった自然災害や、事件・事故・テロなどの予期せぬ危機、倒産や法律違反、製品トラブルといった企業内部の危機です。これらに対して迅速で的確な対処を行うことを危機管理といいます。
危機管理における対象は、ほぼ予測できません。危機的状況に陥っても被害を最小限に留め、かつできるだけ早急に復旧することが危機管理の目的です。また企業にとって重要な資産、情報、人材を守り、事業継続ができるように対策をすることが目的となります。
3.11東日本大震災での自動車メーカーの事例を紹介します。
ある自動車メーカーの工場は被災地にあって甚大な被害を受け、操業不能となりました。自動車部品の供給が止まったことで、全国の自動車メーカーが生産を一時停止するほどの危機的状況に。
そこでいくつかの自動車メーカーは、被災地以外の生産拠点から仕入れる、他の部品メーカーから仕入れるなど生産ラインを回すための手段を講じました。
自動車メーカー同士で、操業不能となった工場を一緒に再建するという相互支援を行っています。
「リスク管理」の対象となるのは、事業活動において起こりうるあらゆるリスクとなります。大きくヒューマンエラーによるもの、システムエラーによるものに分けられますが、予測可能なので事前に想定して適切にコントロールすることが大切です。
ヒューマンエラーやシステムエラーなどによってトラブルが発生しても、事業継続を確保して企業価値を守ることがリスク管理の目的です。
あらかじめ予測できるリスクにおいて、万が一の対策を講じておくことで、被害を最小限に留め、企業価値を守るだけでなく高めることも可能となります。
製造業において大きな問題となるリスクは品質不良です。製品のリコールが発生すると、製品だけでなく企業イメージまで失墜し、売上が著しく落ちたり、経営不振に陥ったりすることもあります。
そのため、大きく3つの対策をしています。
1つ目はヒューマンエラーに対する教育や指導の徹底など、リスクができる限り起きないようにするための対策です。2つ目はヒューマンエラー、システムエラーが起きた際に、少しでもリスクを軽減するための対策。例えばデータのバックアップ、システムダウンから迅速に回復できるための予備確保などが挙げられます。
3つ目には、リスクを分散することです。どんなに対策をしてもリスクは生じるため、万が一に備えて被害が最小になるようリスクを分散させています。
リスク管理で対象となるのは、ヒューマンエラーやシステムエラーといった「予測可能」なトラブルです。
一方、危機管理で対象となるのは自然災害やテロ、事故、事件といった「予測不能」なトラブルとなります。
どちらも事業継続において対策は不可欠ですが、リスク管理においては予測ができるため「予防」を中心とした対策になります。
危機管理は万が一起こった場合にどのような行動を取ればよいか「対処」を考える必要があります。
BCPは危機的状況における事業継続のための計画であるとし、危機管理に含まれるとする説が一般的です。
ただしBCP策定には人的ミスやシステムエラーなどによって起こる「リスク管理」の予測や分析も欠かせません。BCPがいかなる状況においても事業継続ができるよう講じる対策を指すならば、「リスク管理」の要素は考慮せざるを得ないものだからです。
未然に防止するための「リスク管理」、災害や事件・事故発生時における「危機管理」を正しく認識し、どちらも対策をする必要があります。
BCPを考える上で大切なのは、リスク管理・危機管理を正しく理解しておくことです。それぞれに必要なポイントをまとめましたので、双方の違いをしっかり認識しましょう。
リスク管理に必要なのは、将来起こりうる状況や影響を想定することです。この想定がBCP策定の前提条件となるので、リスクの想定をあらゆる角度から行う必要があります。
「想定外」のことも起こりうることを考え、できる限りリスクを最小限になるよう策定していきます。
例えば「停電」が起こった場合、どのような状況や影響が起こるかを想定し、前提条件に対してどのように対処するかを考えていきます。停電はあらゆる原因で発生することが考えられ、自社に大きな影響を与える可能性も想定できます。事象が起こった際の、結果まで想定に入れることが大切です。
いつ起こるかわからない危機的状況では、少しでも早く復旧できるための危機管理のポイントがあります。
まずは危機管理の体制を構築し、役割を決めておきます。担当を部署や人に割当て、指示系統をあらかじめ決めておきましょう。
また危機的状況ではマニュアルを策定しておくことも重要です。担当ごとに「いつまでに・誰が・何をどうする」という具体的な対応手順を作成しておくと、混乱した状態でも対処しやすくなります。
さらには緊急時に必要になるツールの準備を行い、訓練を実施することもポイントです。