工場(製造業)の
停電対策・非常用電源
災害時に必要最低限の主力業務を継続するための、必要となる非常用電源や、非常用電源に利用できるの補助金を紹介します。災害に備えてさまざまな補助金が用意されていますので、工場の停電対策に非常用電源をお考えの方は、参考にしてみてください。
工場の停電対策になぜ
非常用発電源が必要なのか
2011年3月に発生した東日本大震災の際には、発電所の事故や電力供給停止により、東日本エリアの電力供給力が一気に低下しました。震災後も電力不足の懸念から、首都圏エリアでは計10日間の計画停電を実施。直接被災していない企業であっても、製造業をはじめとして多くの企業が生産停止や減産を余儀なくされました。
また、2018年9月の北海道胆振東部地震では、エリア全域に及ぶ大規模な停電が発生。北海道によると商工関係の被害額は約13億円、売上影響額も1,318億円と推定されています。
非常用電源設置により停電対策がなされていれば、必要最小限のパソコンや通信設備、主力生産設備や製造ラインなどに優先的に電力を供給することが可能です。そのため、災害時であっても外部との連絡や必要最低限の業務継続ができます。
非常用電源の種類
非常用電源「LPガス」「ディーゼル」「産業用蓄電池」「太陽光発電」それぞれについて、特徴やよいところ、弱点について説明します。
LPガス発電機
LPガス発電機とは
工場敷地内に備蓄できるLPガスを燃料としてエンジンを回して電気をつくる発電機。バルブやシリンダーに燃料を貯蔵することができ、72時間以上の連続運転が可能です。
LPガス発電機のよいところ
- 燃料の劣化が少なく、ランニングコストを抑えられる。
- 都市ガスのような配管がないため、災害時に供給途絶が起こらない。
- 排気に二酸化炭素や黒煙を含まず、エコでクリーン。
- ディーゼル式、ガソリン式のようなメンテナンスの手間を省くことができる。
LPガス発電機の弱点
- 可搬式と定置式があるが、製品の種類自体が少ない。
- 化石燃料と比較すると燃費が割高になることがある。
LPガス発電機の導入に利用できる補助金
- LPガス災害バルク補助金制度
正式名称:災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金
- 補助金の目的(概要)
LPガス災害バルク補助金制度は、医療施設や福祉施設、公的な避難所となるうる施設を対象とした補助金制度です。施設の水道や電力、ガスなどのライフラインを維持するための、LPガス災害バルク等の設置に必要な費用を補助します。LPガス災害バルク等を設置することで、災害時においても施設等に対するLPガスの供給の安定化を図ります。
管轄 |
経済産業省 資源エネルギー庁 |
補助金窓口 |
LPガス振興センター |
期間 |
令和6年2月14日(水)~令和6年3月6日(水)12時まで |
対象施設 |
災害発生時に避難場所まで避難することが困難な者が多数生じる施設等 公的避難所 一時避難所となり得るような施設等 液化石油ガス保安規則に規定する液化石油ガススタンド |
損害評価チーム |
公開されていません |
補助対象設備 |
LPガス発電機 空調機器 燃焼機器 給湯器 簡易スタンドユニット等 |
補助率 |
定額補助(2/3相当または1/2相当) |
補助上限金額 |
条件によって異なる |
参照元:経済産業省 資源エネルギー庁(https://www.enecho.meti.go.jp/appli/public_offer/2023/0214_01.html)
ディーゼル発電機
ディーゼル発電機とは
軽油を燃料として、ディーゼルエンジンを動かして電気をつくり、電力を供給することができる発電機。製品の取り扱いメーカーが多く、非常用発電機として広く普及しています。
ディーゼル発電機のよいところ
- 比較的燃料は安く、発電効率がよい。
- 規模や性能などで製品の選択肢が多い。
- 設置場所にそれほど広いスペースを必要としない。
ディーゼル発電機の弱点
- 燃料が劣化しがちで、いざという時に動かない場合がある。
- 災害時にガソリンスタンドが被災すれば、燃料を入手することができなくなる。
- 定期的なメンテナンスをする必要があり、ランニングコストがかかる。
ディーゼル発電機の導入に利用できる補助金
- 自家発電装置、蓄電池補助金
正式名称:BCP実践促進助成金
- 補助金の目的
BCP実践促進助成金は、BCPの実践に必要な設備等の導入に要する経費の一部を助成する制度です。BCP実践促進助成金によって、BPCの策定及び対策用品の備蓄を促進することを目的としています。災害等で基幹システムが損害を受けると業務遂行の障害となることから、防災力の強化のために、基幹システムのクラウド化にかかる費用の一部も助成されます。
管轄 |
東京都、公益財団法人東京都中小企業振興公社 |
補助金窓口 |
公益財団法人東京都中小企業振興公社 |
期間 |
令和6年5月13日(月)9:00時~5月17日(金)17:00 |
対象施設 |
中小企業等 |
損害評価チーム |
公開されていません |
補助対象設備 |
自家発電装置、蓄電池 安否確認システム 感染症対策の物品 従業員用の備蓄品 土のう、止水版 転倒防止装置等 データバックアップ専用のサーバー(NAS)、クラウドサービスによるデータのバックアップ 基幹システムのクラウド化 耐震診断 |
補助率 |
単独型:中小企業者1/2、小規模企業者2/3以内 連携型:中小企業者1/2以内 |
補助上限金額 |
1,500万円(申請下限額10万円)(基幹システムのクラウド化の助成上限額450万円を含む) |
参照元:東京都中小企業振興公社(https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/bcp.html)
産業用蓄電池
産業用蓄電池とは
一般住宅以外の建物に設置する蓄電システム。余剰電力を備蓄して必要な時に使用することができます。災害時だけでなく、平常時でも自家消費に使用可能であるため、全体の電力消費量を抑えることも可能です。
産業用蓄電池のよいところ
- 平時でも工場操業に必要な電力をすべて賄うことができる。
- 電力会社への売電ロスを防ぐことができる。
産業用蓄電池の弱点
- 初期費用がかかり、蓄電池を置くスペースが必要。
- 蓄電池に電力を供給するための太陽光発電などの設備投資が必要となる。
産業用蓄電池の導入に利用できる補助金
産業用蓄電池の導入に関しては、環境省と経済産業省でさまざまな支援を行っています。令和6年度に蓄電池導入に使える補助金制度は以下の通りです。補助金には期限がありますので、早めに導入を検討してください。
- 地域脱炭素の推進のための交付金(地域脱炭素移行・再エネ推進交付金、特定地域脱炭素移行加速化交付金)
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000156319.pdf)
- 地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000156329.pdf)
- 地域脱炭素の推進のための交付金(地域脱炭素移行・再エネ推進交付金、特定地域脱炭素移行加速化交付金)
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000098643.pdf)
- 地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000104505.pdf#page=8)
- 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業(一部総務省・農林水産省・経済産業省連携事業)
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000156332.pdf)
- 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうち、(1)ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業(経済産業省連携事業)
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000156332.pdf#page=2)
- 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうち、(2)新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業(一部農林水産省・経済産業省連携事業)
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000156332.pdf#page=2)
- 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうち、(3)再エネ主力化に向けた需要側の運転制御設備等導入促進事業
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000156332.pdf#page=5)
- 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうち、(4)離島等における再エネ主力化に向けた設備導入等支援事
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000104505.pdf#page=6)
- 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうち、(5)平時の省CO2と災害時避難施設を両立する新手法による建物間融通モデル創出事業
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000156332.pdf#page=9)
- 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうち、(7)公共施設の設備制御による地域内再エネ活用モデル構築事業
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000156332.pdf#page=11)
- 浄化槽システムの脱炭素化推進事業
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/content/000156388.pdf)
- 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費
参照元:経済産業省(https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2024/pr/gx/keisan_gx_05.pdf)
- 需要家主導太陽光発電導入促進事業
参照元:経済産業省(https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2024/pr/en/shoshin_taka_28.pdf)
太陽光発電
太陽光発電とは
平地や屋上、屋根などに設置した太陽光パネルにより、太陽熱を電気エネルギーに変換する発電システム。燃料費がかからないだけでなく、二酸化炭素も排出しないクリーンな発電機であり、電力の源となる太陽光が枯渇することがありません。
太陽光発電のよいところ
- 燃料を必要としないため経済的である。
- 蓄電池と併用することで、日中備蓄した電力を夜間に使用することも可能。
- 税制優遇や補助金を活用して導入費用抑えることができる。
太陽光発電の弱点
- 発電量は天候に左右されるため、電力供給が不安定。
- 工場以外に太陽光パネルを設置する広大なスペースが必要となる。
太陽光発電の導入に利用できる補助金
「営農型太陽光発電」地域における太陽光発電の新たな設置場所活用事業
- 補助金の目的(概要)
営農型太陽光発電における太陽光発電の設置場所活用事業では、畑などの上に設置した屋根で太陽光発電を行う事業に対して補助金を支給しています。英農地を活用した太陽光発電設備の導入によって、地域の最エネ主力化・レジリエンス強化の促進を加速化。2050年のカーボンニュートラルの実現を目的としています。
管轄 |
一般社団法人 環境技術普及促進協会 |
補助金窓口 |
一般社団法人 環境技術普及促進協会 |
期間 |
一次:令和6年3月29日(金)から4月26日(金)正午まで 二次:令和6年5月24日(金)から6月21日(金)正午まで |
対象施設 |
民間企業 個人・個人事業主(農林水産事業者) 独立行政法人 地方独立行政法人 国立大学法人、公立大学法人及び学校法人 社会福祉法人 医療法人 協同組合 一般社団法人・一般財団法人及び公益社団法人・公益財団法人 農林水産事業者の組織する団体 その他大臣の承認を得て協会が適当と認める者 |
損害評価チーム |
公開されていません |
補助対象設備 |
太陽光発電設備 定置用蓄電池(業務・産業用、家庭用) 自営線 エネルギーマネジメントシステム(EMS) 受変電設備 その他協会が適当と認める設備 |
補助率 |
1/2 |
補助上限金額 |
1億5,000万円 |
参照元:環境技術普及促進協会(https://eta.or.jp/offering/2024/solar/files/02_einouchi.pdf)
「廃棄物処理場」地域における太陽光発電の新たな設置場所活用事業
- 補助金の目的(概要)
廃棄物処理場を活用した太陽光発電設備設置に対する補助金は、2050年のカーボンニュートラル実現を資することを目的とした補助金制度です。廃棄物処理場とは、リサイクルができない廃棄物を埋め立てる処理施設を指します。停電時に電力供給を可能とするシステム構築であることなど、さまざまな条件が定められています。
管轄 |
一般社団法人 環境技術普及促進協会 |
補助金窓口 |
一般社団法人 環境技術普及促進協会 |
期間 |
一次:令和6年3月29日(金)から4月26日(金)正午まで 二次:令和6年5月24日(金)から6月21日(金)正午まで |
対象施設 |
民間企業 独立行政法人 地方独立行政法人 国立大学法人、公立大学法人及び学校法人 社会福祉法人 医療法人 協同組合 一般社団法人・一般財団法人及び公益社団法人・公益財団法人 その他大臣の承認を得て協会が適当と認める者 |
損害評価チーム |
公開されていません |
補助対象設備 |
太陽光発電設備 定置用蓄電池(業務・産業用、家庭用) 自営線 エネルギーマネジメントシステム(EMS) 受変電設備 その他協会が適当と認める設備 |
補助率 |
1/2 |
補助上限金額 |
1億5,000万円 |
参照元:東京都中小企業振興公社(https://eta.or.jp/offering/2024/solar/files/04_haiki.pdf)
工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT 事業)
- 補助金の目的(概要)
工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT 事業)は、CO2削減のための設備更新に対する補助金制度です。「CO2削減計画策定支援」「省CO2型設備更新支援」「企業連携先進モデル支援」の3つの補助金制度があり、工場や事業所等におけるエネルギー消費効率の改善を目的として支援しています。
管轄 |
環境省 |
補助金窓口 |
一般社団法人 温室効果ガス審査協会 |
期間 |
令和6年3月25日(月)~5月31日(金)12:00必着 |
対象施設 |
中小企業者 独立行政法人 地方独立行政法人 国立大学法人、公立大学法人及び学校法人 社会福祉法人 医療法人 協同組合 一般社団法人・一般財団法人及び公益社団法人・公益財団法人 その他環境大臣の承認を得て協会が適当と認める者 地方公共団体 |
損害評価チーム |
公開されていません |
補助対象設備 |
業務費 一般管理費 エネルギー使用設備機器 低炭素燃料供給設備および受変電設備 再生可能エネルギー導入 コジェネレーション発電設備 太陽熱供給設備 |
補助率 |
補助対象経費に対し3/4 |
補助上限金額 |
50万円~200万円(支援内容によって異なる) |
参照元:東京都中小企業振興公社(https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/bcp.html)
プロフェッショナルが語る
工場の停電対策
設備のプロ

池田道雄
池田商会
費用対効果を考えて
設備選定を
BCPで挙がった想定リスクを優先順位に従って解決するにあたって、関連する設備を対策すると無駄な投資を抑えられます。
時々、補助金が出るから発電機を入れるというのが目的になってしまっているご担当者様に出会います。
また、社長指示でBCP対策を指示されたが、いかにコストを抑えるかに拘って目的を果たすのが難しいというケースも見受けられます。
その際に、想定リスクの予測被害額や対策を取ることによって生まれる付加価値などを算出していただき、費用対効果で設備選定をされると社内調整も円滑に運びやすくなるかと思います。
BCPマニュアル策定、BCP設備設計、設備供給、施工管理、補助金申請代行を一括して引き受ける。非常用電源においては、災害時に少なくとも72時間以上の持続可能なエネルギー供給対策を考案・提供。
- 福岡県田川郡福智町金田660-3【全国対応】
- TEL 0947-22-0366 月〜土9:00~18:00
防災のプロ

髙木 敏行
(株)かんがえる防災
経営層と現場側の意見交換が重要
まず、いつまでにどの事業を再開したいか、製造がどの程度遅れると工場の維持が困難となるかなど設備を導入する根拠を知ることで、設備導入の必要性を理解することができます。
これは予め災害想定を行わないと分からないことだと思います。
事業優先順位が決まれば、その事業に必要な設備を理解して頂けます。
「まず設備を導入する」という考え方ではなく、工場の実情を知ったうえで必要な設備を導入することが大切。
経営層と現場側であらかじめ意見交換を行い、共通認識を持ったうえで、設備導入を行ってください。
元消防士であり、防災資格を3種持つ(防災士【登録No.136593】、防災危機管理者【認定番号.190805】、危機管理士2級(自然災害)【登録番号N-19014】)防災のエキスパート。
災害によって失われる、人、物、時間、思い出への被害を軽減するために、必要な物を必要な形で提供するプロ。
- 福岡県福岡市博多区博多駅前四丁目27-5博多ステーションタワー302【全国対応】
- TEL 092-710-5963